恋桜の木

深夜玲奈

第1話

『恋桜の木』


私の土地では、「恋桜の木」と言う不思議な木がある。

その木は、夏に男女が木の前に立ち、手を5回合わせてお辞儀を1回すると不思議なことが起きる。


もし、たくさんの桜の花が咲いたら未来ではそのカップルが楽しく幸せに暮らしていると言う意味で、

もし、桜の花が全て枯れてしまったら、そのカップルは、未来ではすでにに別れていると言う意味だそう。


しかもその恋桜の木が私の家のすぐ目の前だから、毎日、毎日めっちゃイチャついてるカップルたちが来て手を合わせてお辞儀をして、枯れてしまったらすぐそこから別れて、たくさんの桜の花が咲いたら、ぎゅ〜とハグをしている。


それを見ると、気持ち悪すぎていつも吐き気がする。


そしてその翌日。

珍しくおばあさんとおじいさんがやってきた。

2人は腕を組んであんまりイチャつかない感じ。

だから私はずっと見ていた。


でもそのおばあさんとおじいさんのカップルは手を合わせてお辞儀をするんじゃなくて、その恋桜の木に水をあげていた。

そして全部の水をあげ終わったらお辞儀をして帰っていった。


私はこれまでに恋桜の木の前で別れたり、ハグするのを色々見てきたけれど、今回は違ってびっくりした。


そしてよーく考えてみると、なぜ恋桜の木に水をあげたのだろうか?

そんな疑問が出てきた。


それで私は明日恋桜の木に水をあげてみようと思い、今日はぐっすり寝た。


そして次の日の朝。

帽子をかぶって、私服に着替えて、水いっぱいに入った、ジョウロを持って家を飛び出した。


そして、おばあさんとおじいさんのようにその木に水をあげてみた。

そしてジョウロの水がなくなったら、お辞儀をして家に帰っていった。


今日何か起こるのかなあ。

明日何か起こるのかなあ。

もしかしていいことだったり。


そんなわくわくが私の頭の中に暴れ回っていた。


でも翌日になってもその翌日になってもその翌日になっても全然何も起きなかった。

いつもと同じ通り。


なんで何も起きないんだろう?

もし何も起きないんだったら、おばあさんとおじいさんはなんで水をあげたのだろうか?


そんな感じのムズムズが頭に残りながらもベッドに横になった。


そして真夜中の2時。

誰かの足音で私は起きてしまった。


そして、足音のほうに向かっていると、あの時のおばあさんとおじいさんが私の家に入っていた。


なんでここにいるの?

なんか用事?

でもこんな真夜中に?


パニックになりながらも、お母さんとお父さんが寝ている部屋に入ってゆすり起こそうとした。

でもなぜか全然起きない。

いつもだったらすぐに起きるのに…。


でもどんどんどんどんおばあさんとおじいさんが近づいてくる。


よく見ると、おばあさんの手には、ナイフ。

おじいさんの手には斧が…


そして同時にナイフと斧を振り上げて、


「ピーポーピーポー」


なんでパトカーが私の家の前に?

お姉ちゃんがグッドサインしてる。

もしかしてお姉ちゃんが警察に言ってくれたのかなあ?


でも、その瞬間…


ドン!!


「実紀!」


確かにお姉ちゃんの呼ぶ声がしたけれど、意識が朦朧としてきて……

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恋桜の木 深夜玲奈 @Oct_rn

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