静寂世界

漣凛

神社

大きな鳥居がある。少し色褪せた朱色で、でも今もまだ、生物の呼吸が微かに聞こえる。

「……入っても、いいのかな」

不安な声色でハルが言う。ミナは何も言わず、先に石段を登ってゆく。ハルも後を追う。

風鈴の音がした。1度だけ。

「急にカミサマが出てきて、怒られちゃったらどうしようね」

「……そんなこと、ないに決まってんじゃん」

「だといいけどねー」

本殿はとても大きく、威厳がある。

周りにも小さなお賽銭箱とカミサマが祀られていた。

「カミサマって本当にいるのかな」

「さあね」

静けさが2人を包む。触れ合う葉音が心地よく感じる。

風鈴の音が、またひとつ。今度は近くで聞こえた気がした。

「もういこうか」

「ミナちゃんもう飽きたの」

「うるさいぞハル」


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静寂世界 漣凛 @Celestia_0907

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