貧乏転生~もったいないは世界を救う~
梓馬みやこ
1.貧乏高校生、どこかの世界に転生する
良く晴れた夏の日だった。
街を渡る風は熱風で、だが、この時期それはいつものこと。
ただ、川辺でたたずむ彼が目を回してしまったのはいつものことではなかった。
「あれ……なんか、眩暈が……」
貧乏で空腹でも。
体調管理には気を付けている。
体を壊せば医療費がかかってしまうから。
極貧であってもそれだけは無駄な出費と心得る。
それくらい健康に気を付ける彼がその時最後に見たものは、大きく回る空といくばくかの白い雲。そして、空に向かって上がる派手な水しぶきだった。
その日彼は、川に転落して救急搬送先の病院のカルテに、その名を記されることになった……。
* * * * *
落ちた本人はといえば、そんなことを知るわけもない。
意識はしばらく不明だった。
それがどれくらいの時間だったのかなんてこともわかるはずもなく……
「ハル……ハル、しっかりしろ!」
「わたくしのせいです……わたくしが小言ばかり申し上げるから~! お戻りになってください、王様~!」
遥樹の耳には自分を呼ぶ声と、別人を呼ぶ声が混じって聞こえる。
体はやたらと重く、まぶたをあげるまでにも時間はかかったが、なんとか目を開けてそれを見た。
仰向けに横たえられた彼が見たのは、相変わらず青い空と緑の木々。それから覗き込む金髪のお貴族様と黒と白のメイド服みたいなものを着こんだおばさん……といっても過言ではない妙齢の女性だった。
お貴族様とメイド。
……!?
驚いて体をはね起こそうとするが、むせこんだ。突然動いたからおかしなところに水が入ってしまった。よく見れば体中ずぶ濡れで服がやたらと重い。
ブーツの中も水がだぶだぶで気持ち悪くて、何重かに着こんだ緑の服とマントが特に重い。
マント……
事態を飲み込めずになんとか上半身だけ起こせたまま、周りを見回した。
その周りにはやはりメイド服を着こんだ、しかしこちらはメイドのイメージにぴったりな小柄な女の子や土のついたガーデングローブをつけたままの男性、それから執事のような恰好をした白髪の年輩者がそろって心配そうにこちらを見ていた。
「王様!」
「ハル、大丈夫か?」
王様、という呼称と自分の名前が同時に自分に向かって放たれる。
これはいったい……遥樹は思わず両手で顔を覆った。
わかることは一つ、たったひとつだけだ。
「ハル」
「大丈夫じゃない」
うっ、と泣きそうになりながらもそう答えたハルキ。
その声も、自分のものでないことには、気づいたのでわかることが一つ増えたが、何も事態は解決してくれそうになかった。
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