怖い映画感想
タタミ
神は見返りを求める(2022/日本)
愛と憎しみが表裏一体🤕
ムロツヨシと岸井ゆきのが魅せる、痛々しいほどリアルな“醜い公開痴話喧嘩”
吉田恵輔監督による2022年公開のオリジナル脚本作品、『神は見返りを求める』。
吉田監督といえば、『空白』や『ヒメアノ〜ル』など、人間の「負」の側面を主題に、面白くも重苦しい作品を撮ることで知られています。
本作もまた、予想外の展開へと突入する異色ドラマであり、観た人に強烈な印象を残す快作です。
◆映画情報とキャスト
本作は2022年に公開された日本映画で、監督・脚本は吉田恵輔。
主演はムロツヨシと岸井ゆきの。心優しいイベント会社員・
◆感想🎆
最悪で面白い。
底辺YouTuberの手伝いを善意から始めたムロツヨシがどんどん壊れていく話です。
いい意味でイヤ~な映画で、観ていて終始明るい気分にはならずしんどいです。2度は観たくないけど、1回見始めたら止まらない。他の人にも観てもらって一緒に最悪な気分になってもらいたくなります。
最悪だけど救いはある──ような、ないような……。
ムロツヨシさんの壊れた演技が好きです。
◆過激度:★★
グロ推しの作品ではないですが、ちょいちょい怪我するので血糊の出番はあります。
わかりやすいエロもほぼありません(下着シーンくらいはある)。人間の醜さがメインです。
(※以下よりネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください)
◆映画の詳細:神と崇められた男が豹変するまで
物語は、イベント会社に勤める
田母神は、ゆりちゃんが提供禁止の生肉をこっそり出す店を紹介してしまい、店が閉店に追い込まれた際も、示談金を自腹で負担するなど自己犠牲精神の強い人物です。
そんな田母神が本業で忙しくなりゆりちゃんとの関係がおろそかになると、ゆりちゃんは人気YouTuberとのコラボ動画で突然ブレイクします。売れっ子になったゆりちゃんは田母神の忠告を聞かなくなり、冷たい態度を取り始め、彼を雑用係として扱い始めます。
私生活で多額の借金を背負ってしまった田母神は、ゆりちゃんを呼び出し、これまでの自腹の負担などを挙げ、50万円を渡してほしいと頼みます。しかしゆりちゃんは「見返りはいらないと言ったじゃないですか」と反論し、二人の関係はついに決裂。
「見返りを求める男」に豹変した田母神と、「恩を仇で返す女」になったゆりちゃん。田母神は「GOD T(ゴッティー)」という覆面YouTuberとして、ゆりちゃんへの攻撃を開始します。ゆりちゃん側も反撃し、争いは大衆の注目を集める一大バトルへと発展。
ゆりちゃんは、争いを終わらせたいと考え始めるものの、世話になったデザイナーらに従うしかありません。一方、田母神は別の覆面YouTuberから襲撃を受けてしまいます。そしてなぜか頭から血を流しながら、かつてゆりちゃんと踊ったダンスを撮影し始めます(このあたり狂気的ですごい)。
その後、ゆりちゃんは撮影中に花火が服に着火し、全身に大やけどを負います。病院に運ばれたゆりちゃんのもとに以前田母神を襲った覆面YouTuberが撮影しに現れますが、田母神が彼を追い払い、素顔を撮影して脅しをかけます。
再び病室で田母神にカメラを向けられたゆりちゃんは、「やっぱりあなたが嫌い」と言った後、「でも、ありがとう」と続けます。田母神はその「ありがとう」という言葉を何度も再生します(ここで話が終わってほしかった)。
田母神は帰宅後、病院で素顔を撮影したYouTuberに待ち伏せされ、傘で背中を何度も刺されてしまいます。血を流しながらも、田母神は立ち上がり、商店街をよろよろと進み、小声で歌いながら、ゆりちゃんと踊ったダンスを踊り続けるのでした……──。
◆痛すぎる愛憎ストーリー
人間のエゴとエゴのぶつかり合いを、他人事とは思えないほどの痛々しさで描いています。
延々と展開する醜いバトルですが、掘り下げると根本的にはラブストーリーな気がします。田母神の行動は間違いなく愛と憎しみに溢れており、二人の争いはある意味みっともない公開痴話喧嘩。終盤、田母神が血を流しながらも踊り続けるダンスは、愛と憎しみが混ざり合った狂気が駄々洩れています。
田母神は元々他人を優先する優しすぎる性格の人物です。彼は見返りを求めているように見えても、本質的には純粋で何も求めていない。ゆりちゃんは夢を叶えるために必死であり、有名になったことで欲に溺れてしまいますが、最終的には初心を思い出して田母神に「ありがとう」を伝えます。ゆりちゃんの改心があるので、一応多少の救いがある……。
人間関係のリアルな醜さを描き出しており、観た側が誰かしらの登場人物の要素をうっすらと持っていることを自覚させてきます。
「胸糞悪い」けど、それだけじゃない映画です。
次の更新予定
2025年12月17日 21:00
怖い映画感想 タタミ @tatami_tatami
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