第3話:特訓します(3)
ユキナは洞窟の奥でひたすら特訓を続けていた。
「もっと強くならないと…」
鉄のグローブを装着した手に力を込め、岩壁を叩きつける。
グローブの鉄部分が岩に食い込み、ゴツゴツと音を立てる。
腕の筋肉が引きつり、肩が痛むけれど、それでもユキナは休まずに訓練を続けていた。
「(ゴブリンもガーゴイルも倒した⋯⋯けど、これじゃ満足できない…!)」
心の中でそう呟きながら、さらに強く、もっと正確に岩を叩き続ける。
その姿勢には迷いがなく、ひたすらに「強くなりたい」という一心で挑んでいた。
しかし、時間が経つにつれて、だんだん体力が尽きてきたのを感じる。
息が荒くなり、汗が額を伝っていく。
「…そろそろ帰らないと。」
「おっかしいな、さっき来た道は…⋯」
何度も同じ場所を通っている気がして、だんだんと不安が広がる。
出口を見つけることができない。
そのうち、道が狭くなり、岩壁が重なり合っているような場所に足を踏み入れていた。
「もしかして⋯⋯迷った?」
「もしかしなくても迷ったなこれ⋯⋯」
ユキナは立ち止まり、深呼吸をして気を落ち着けようとした。
冷静に考えることが大切だと自分に言い聞かせる。
「もう一度、道を探してみよう。」
あらゆる方向を確認し、進む先を決めようとするが、どこを進んでも同じような岩壁が続くだけだった。
何度も歩いてきた道を戻ろうとしたが、どれも出口に繋がらない。
そのうち、ますます不安になり、焦る気持ちが込み上げてくる。
だけど、ユキナはその感情を必死で抑え、前に進むことを決意した。
「今、立ち止まっても意味がない。絶対に出口を見つけてみせる!」
気を引き締めて再び歩き出し、洞窟の中を進む。
すると、ふと岩壁に目を止める。
あまりにも均等に並んだ岩が不自然に感じた。
ユキナは鉄のグローブを握りしめ、岩壁の不自然な部分をじっと見つめた。
そして、すぐにグローブを使ってその場所を叩いてみることにした。
「これで…」
グローブを使い力強く岩壁を打つと、カラン、カランという音が響き、次の瞬間、岩壁が少しずつ崩れ始め、隠された道が現れた。
「…よいしょ!」
ユキナはその道をすぐに進み始めた。
途中、岩が崩れ落ちる音を背に、暗い通路を進んでいく。
数分後、目の前に明かりが見えてきた。
「やっと…外だ!」
出口にたどり着いたユキナは、ほっと一息つき、洞窟の外の空気を吸い込んだ。
夜の空が広がり、月の光が彼女の顔を照らす。
「あちゃあ⋯⋯夜になってる⋯⋯」
ユキナは深呼吸をしながら、山を降りていった。
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