異世界帰りの俺。倒したはずの魔王を拾う

ぺけらんど

プロローグ

元勇者 班目白まだらめ はくは困惑していた

いや、絶望していたのほうが正しいであろう


「おう!お主勇者か!光栄に思え、我を拾う権利を貴様にやろう!」


───なぜなら

ダンボールの中に倒したはずの魔王がいて

挙句の果てに拾ってくれと命令してくるからである


どうして……どうしてこうなるんだよーー!!

彼は叫んだ、今この瞬間を受け入れたくがないために


‘‘最悪だーー!俺を!異世界に!帰してくれーーー‘‘


異世界帰りの彼は切実にそれでいて絶望的に願うのであった……





平凡な高校生、班目白まだらめ はくは勇者であった。


今の生活に満足もしていないが不満もない

平凡な高校生

そんな俺がある日、目を覚ますと

目の前に《神》がいた。


当然、俺はびっくりして《神》を問いただすと

自分はこれから、とある国に召喚されるのだという

そこで魔王を倒して世界を救ってほしいと。


俺は欣喜雀躍した、アニメなどでよく見るこれが異世界転移なのだと

いかにも高校生らしく、平凡から逃げ出したかった俺はすぐに二つ返事で承諾した。


そしてやはりアニメで見た通り、俺の目論見通り

《神》からチートスキルを授かった


名を

完璧パーフェクト神童ジーニアス

能力は完全適応

どんな物事にも適応し、どの分野においても天才的な力を発揮する

常時発動パッシブ技能スキルだ。


そうして俺はスキルを授かり

リアストラーデ王国の召喚魔法により呼び出された


そして姫からのお決まりのセリフ

「魔王を倒してこの国を救ってください」


魔王のせいで魔物が狂暴化して民の命が危ないなど

自分の使命が如何に重要か説明された。


そして、国から選ばれた

『聖女』『魔女』『戦士』

そして『勇者』

この四人でいわゆる世界を救う『勇者パーティー』が結成された。


俺はひねくれたやつでもないし、悪辣な人間でもなかったので

世界を救ってやろうと努力した

いや、訂正。あんま努力はしてない


最初はしょぼいと思った『完璧パーフェクト神童ジーニアス

これがやばい。

何がやばいかというと剣技にも魔法にも適応できたから

攻撃がまず効かない

それでいて適応で剣や魔法の天才にもなれる

まさにチートと呼ぶにふさわしいスキルだった。


だがこのスキルには一つ欠点がある

このスキルを持つものは何か一つだけ決定的に才能がなくなるらしい

最初に《神》から告げられた時は特に気にも留めなかったが

過ごしていくうちになんの才能がなくなったか分かった


───恋愛だ。

恋、愛、交際、結婚

恋愛の類に関する才能が壊滅的にない。


この世界は素晴らしい

魔法もあるし、魔物だっている

まさにアニメでみて臨んだ通りの世界だ


街を歩けば「勇者様!勇者様!」とちやほやされるし

金はありまくりだし、共に歩める仲間だっている


だけど……だけど……!!

彼女がいない!!

恋ができない!!


試しに仲間の聖女に告白したときなんて言われたと思う?

汚物を見るような眼差しで心底軽蔑した目で

「え……?私のことそうゆう目で見てらっしゃったのですか?きも。……はは」

苦笑いとひきつった顔とともに吐き出される

言葉の数々は俺の心を深々と抉った


かりにも!聖女とあろうものが!こんなこと言うかね!……と

失恋のショックで旅は中断されるし、告白したせいで聖女は俺のことを勇者ではなく汚物だと思ってるしで最悪だ。


この時、俺は決意した、てかトラウマになった。

‘‘二度と恋愛なんぞしてやるものか!!‘‘


決意表明をした俺は無敵だった

僅か一週間ほどで魔王軍四天王を塵にし、魔王の玉座へと辿り着いた。


このまま余裕だと思い、慢心と共に魔王へと特攻した

それが間違いだった

次の瞬間

俺の『右腕』が空を舞っていた


「あああぁぁああぁぁああぁぁぁああぁ!!」


痛い、痛い、痛い!

完璧パーフェクト神童ジーニアス』は?

なんで適応しなかった?

攻撃が通るにしても右腕が吹き飛ぶ威力なんて……


幼女体系の魔王は

その場でうずくまって痛みをこらえている

俺を嘲笑し。


勝手にネタバラシを始める

「ふっふっふ、間抜けよのう。勇者よ」


「なん……で。俺のスキルが……効かない……」


「そりゃあ我が、スキルを無効化する魔眼もってるからじゃ」


のじゃっ子ロリ魔王の右目が淡く光る

綺麗な紫色の眼

誰もを虜にするような、魔王のカリスマ性がそこにはあった。


「お主がどんなスキルをもってようと我には効かん。さぁ、ひれ伏すがよい勇者よ」


あぁ……勝てないかもしれない。

だからといって諦めるのか?……いや、そうもいかないだろう。


俺、班目白まだらめ はくは勇者だ。


俺を平凡から救ってくれたこの世界を


愛すべきこの世界を救わないでなにが勇者だっ!


リリカァ聖女!!俺に聖女の奇跡を賭けろ!」

俺をこっぴどく振った聖女に大声で叫ぶ


俺に多大なるバフがかかる、やはりスキルが無効化されても魔法は無効にならないようだ。


身体強化フィジカルブースト!!」

自分に身体強化を何重にも重ね掛けする


そうやって決死の覚悟で魔王を倒した俺は

その場に倒れる。


泣くなよ、聖女リリカあんなに俺をこっぴどく振ったくせに

そんな顔するな、戦士ゴート一緒に酒飲んでくれてありがとな

そっぽ向いてないで最後くらい顔見せてくれよ、魔女マーシャ

魔王に特攻するときこっそりバフかけてくれて助かったよ


お前らは最高の仲間だ

今までありがとう。


かくして勇者班目白の人生は終わった


がしかし

俺はなんと異世界転移する前に戻っていたのである。


世界を救った俺への《神》からのお礼だろうか。

そんなお礼はいらないから、あの異世界へ帰してくれと何度も願った


また退屈な高校生に戻るのだと



「……それで?なんであんな激闘を繰り広げた仇敵のお前が現代ここにいるんだ?」


「それはじゃの!我にもわからんのじゃ!」

ドヤ顔でそんなこと言われても……


「そんなことより勇者よ!我を養うのじゃ」


「はぁ?嫌だね、何が楽しくてお前みたいなの養わなきゃならんのよ」


「このだんぼぉるってやつは寒いのじゃ……ゆうしゃぁ拾ってくれぬのかぁ?」


うぐっ……その上目遣いやめろ、魔王の威厳はどうしたんだ一体。


「だぁあ!もう、わかったよ!もう!一日だけな!わーったか?」


「真か!?やった!やったのじゃ!感謝するぞ!勇者ぁ!」


こうして元勇者班目白と角の生えた銀髪紅眼ロリ体系のじゃっ子、魔王リース

との不思議な共同生活が幕を開けた。



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2025年12月21日 14:30

異世界帰りの俺。倒したはずの魔王を拾う ぺけらんど @pekerando

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