エピローグ

どこかで、新しき「轟雷号」が起動する音がした。

『大悟! 応答せよ、大悟!』

通信機より響く司令官殿の御声が、操縦室内に木霊した。

神崎大悟一等兵は操縦桿を握りしめたまま、前方の映像板を睨みつけていた。

「聴取しております、司令官殿」

胸の奥より、熱きものが込み上げてくる。

「小官は——御国を守る為に、戦います」

天皇陛下万歳。

それが、小官の大和魂であるが故に。


研究施設の観察室で、研究者達がモニターを見つめていた。

「三百二十八体目、起動完了」

「忠誠度指数、正常値」

「『玉砕』までの推定時間は?」

「前回と同じく、約七十二時間です」

研究者達は、満足気に頷き合った。

モニターの中で、轟雷号が外寇に向かって突撃していく。

『御国の為に!』

その叫び声が、観察室に響いた。

主任研究者は、珈琲を啜りながら、退屈そうに呟いた。

「全く、何度見ても滑稽だな。存在しない国の為に死ぬとは」

隣の研究者が、肩を竦めた。

「でも、製品としては最高ですよ。疑問を持たず、命令に従い、喜んで死ぬ。理想的な兵器だ」

「違いない」

主任研究者は、記録簿に書き込んだ。

『被験体三百二十八号、実験開始。「大和魂」プログラム、正常に作動中』

窓の外では、星条旗が風に靡いていた。

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鋼鉄ノ魂 @hashito_

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