女心と秋の空

越山あきよし

女心と秋の空

「急に呼び出してごめんなさい。


 驚いたよ。急だったもんだから。


 本当にごめんなさい。でも、どうしても我慢できなくて。


 なら、しょうがないね。


 うん。しょうがないの。


 それで用事ってなんだい?


 実はね……私、病気なの。


 え? 病気?


 そう。


 それは大変だ。どんな病気なんだい?


 恋の病。


 え?


 私、あなたが好きです。


 それは、本当かい?


 はい。さっき急に好きになりました。だから私と付き合ってください」


 ――ガタッ!


「誰⁉」


「いや、すまない。盗み聞きするつもりはなかったのだが……」


「あなたは、私の好きな人!」


「お?」


「あ……」


「聞かなかったことにするよ」


「待ってください!」


「どうしたんだ?」


「私、あなたのことが好きです! 付き合ってください!」


「そうか……わかった。付き合おう」


「本当ですか⁉」


「ああ」


「やった!」


「今日から君は僕の子猫ちゃんというわけか」


「……あ、急に病気が治ったのでもういいです」


「なぜ⁉」


「女心と秋の空、でした」

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女心と秋の空 越山あきよし @koshiyama

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