第2話 グローブ座の亡霊たち


──イマーシブの扉が開く──


クベは不死テレビの玄関から青梅・台場クロスウォークを渡り青梅駅方面を南東へ

青梅縦貫線を歩いていく・・・

それを空撮を交えてパンそしてズーム

大きな建物に入っていく・・・


そこは昔・・・ビーナス・フォートと呼ばれていた場所・・・今は


【舞台:イマーシブ・グローブ座ロビー】


※舞台は中世の街と未来の劇場が交差したような、異様な空間。天井は高く、壁に映るのは回想とも幻想ともつかぬ映像。観客は舞台上を自由に歩くことができる構造。音楽は静かなゴシック調で始まり、徐々に混沌の和音へ。


──暗転ののち、クベがフラつくように舞台に現れる。

彼はディレクターズチェアを片手に持ち、どこか放心した様子。


クベ(独白)


「……結局、断られた。

彼女の目に映るのは、月でも星でもなく……あいつだった。

台本じゃない……現実が、俺の心をリテイクしてくる……」


(舞台中央、ステンドグラスを模した扉が自動的に開く。

淡い光の中から一人の女が登場)


※ここで現れるのが、「グローブ座の案内人」=**“オババ”**。

演じるは、もしがく(もしも学芸会)出身の女優・菊池凛子風の異才。花都小鳩。

黒い衣装にボロのフェザーケープを纏い、眼差しは鋭く、ユーモアと狂気を漂わせている。



【対話:クベ × オババ(菊池凛子風)】


オババ(低く囁くように)


「クベさん。ようこそ、《魂の稽古場》へ。

あなたの役、まだ空いてますよ。“地獄の主役”という、大役が」


クベ(驚いて一歩後ずさる)


「……誰? 局のスタッフじゃないよな……?」


オババ(微笑むが目は笑っていない)


「私は、誰でもないし、誰にでもなれる。

台本次第では、“ヒロイン”にも“死神”にもなれるの」


(オババ、舞台奥の古びた吊看板を指す。そこには

《Globe Theatre - Choice is the Curse》の文字)


オババ(言葉を噛みしめるように)


「ここは“観る”場所じゃない、“演じる”場所。

イマーシブ──つまり、あなた自身が“物語に沈む”劇場」


(場内の照明が赤く染まり、クベの背後に“演出席”のような椅子が出現)



(天井のスクリーンに、雨の屋上、揺れるフェンス、舞い落ちるメモ用紙の映像が

一瞬だけ走る)


オババ(視線を上に向けながら)


「飛ぶって、意外と気持ちいいのよ。

重さがね、ふっと無くなるの。

あ、ほら、考えないで。言葉の綾よ、綾」


クベ(動揺しつつ、顔を背ける)


「やめろよ、そういうの……やめてくれ……」


オババ(急に明るくなる)


「さぁ! お好きな劇場をお選びなさい!

血のステージ? 恋の回廊? それとも“記憶のゴミ捨て場”?

どこで泣いて、どこで殺されたい?」



【選択の場:分岐する劇場たち】


※舞台の壁が回転し、五つの扉が浮かび上がる。

各扉には微かに人物の影が見える。理恵、赤兎、クロード、妹ジュリア──

そして誰かが立つ“空っぽの演台”。

1. 血のステージ(MURDER)

2. 恋の螺旋階段(DESIRE)

3. 黒の病室(FEAR)

4. 天井の下の部屋(記憶memorie)

5. 無限リハーサル(RETAKE)


オババ(急に真顔で)


「選びなさい、クベ。

貴方が選ばなければ、“役”が勝手に貴方を選ぶわよ」


クベ(しばし逡巡したのち、歩き出す)


「だったら……俺が選んでやるさ。

台本を握るのは、いつだって“演出家”だ」


(彼が進んだのは、最も血の気が引くような重厚な赤──)


(赤い扉がゆっくり開き、劇場内から音楽と歓声が混じるノイズが響く。

まるで地獄の釜があく開演ベルのように)


ブーーーーーー


暗転──



【ト書き:イマーシブシアターとは(劇中補足)】


※舞台奥スクリーンに映像挿入ナレーション風


イマーシブ・シアター。

それは観客が客席を離れ、物語の中に“住む”演劇。

俳優との距離がゼロとなり、選択と運命が交差する「異世界型劇場」。

結末は一つとは限らず、あなたが“どの役”を演じたかで物語は変わる。


なお今作品は、台場にあるイマーシブ・フォート東京とはなんの関係もありません。

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