マクベス地獄編

稲富良次

第1話 アバンタイトル「真夜中のプロポーズ」

《マクベス地獄編》

幕が上がる

人生は舞台

我々はただ役者にすぎぬ・・・

(※舞台は暗転。微かに聖歌が流れ、雪が舞う中、静かに照明が灯る)


【舞台セット】

• 高層ビルの屋上(手すり、東京の夜景パネル、クリスマスツリーの

    オーナメント風装飾)

• 屋上奥には「不死テレビ」の赤いロゴ看板が点灯

• 月光のようなブルーの照明が全体を包む



【登場人物】

•幕部 段斗(クベ):地味な放送作家。感情の起伏が少ないが、内面は激情型。

•部屋取 理恵(ベアトリチエ):月9ドラマのヒロイン。真面目で芯が強い。

•(影のように登場)伊藤 赤兎(ハムレット/トニー):主演俳優。

   情熱的で二面性あり。



【アバン・幕開け】


(幕が上がる。舞台中央には雪に見立てた紙吹雪が舞う。クベが手すりにもたれて

夜景を見つめている)


幕部 段斗(クベ):(心の声、囁くように)


「言葉は、時として刃となる…。

台本じゃ割り切れないのが、恋ってやつか…。」


(振り返り、足音が近づく。理恵がコート姿で現れる)


部屋取 理恵(ベアトリチエ):


「ここに呼び出されるなんて、プロデューサーに見つかったら、また怒られるわ。」


クベ:(真剣な眼差しで)


「理恵さん…。今日がどんな日か知ってますか?」


理恵:(少し微笑んで)


「クリスマスイブよ。」


クベ:(ゆっくりとポケットから小さな箱を取り出す)


「そう。だから、今日じゃなきゃダメだった。」


(箱を開けると、指輪が月明かりに光る)


クベ:


「…結婚してください。理恵さん。」


(静寂が流れ、理恵の笑顔が消える)


理恵:(目を伏せて)


「…クベさん、ごめんなさい。」


クベ:(戸惑いながら)


「…え?」


理恵:


「あなたのことは…本当に尊敬してる。

でも、赤兎さんからも…アプローチされていて…」


(その瞬間、赤い照明が差し込み、影のように赤兎が登場)


伊藤 赤兎(シャア):


「人の心を動かすのは、脚本じゃない。本能だ。」


(理恵、去る。クベは立ち尽くす。赤兎は不敵に微笑む)


赤兎:


「勝負しよう、クベ。“愛”と“演出”、どっちが本物か…。」


(クベ、拳を握る。舞台後方、常設劇場「グローブ座」のネオンが灯る)


クベ(独白):


「あの劇場が…俺を変える。地獄の幕が、今…開く。」


(照明、暗転。舞台全体が赤黒く染まる)



【効果音・音楽】

• 遠くで鐘の音(クリスマスの教会)

• その後、重低音のギターとグレゴリオ調のコーラスが重なる不穏なBGMへ



《第一章:アバン》終了


(次章へ続く:「グローブ座の亡霊たち」)

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