自転車
壱原 一
パチ屋で知り合った他学部の先輩が後輩の□の自転車を祓えると言うので頼んだ。
後輩の□は深夜後輩と各自転車でコンビニへ出掛け、買い物後後輩が駐輪場でスマホゲーのガチャを回し始めた所アイスが融けると帰路を先行し車に跳ねられたそう。
自転車は前輪を
以来自転車が幾度廃棄せど必ず夜間に帰宅して、朝家族が玄関で目撃するまで両立スタンドで浮いた後輪をペダル
□が自転車で待機する時良くやっていたと言う。
深夜。
先輩と空き地へ赴くと、ブロック塀の内角に、昼貰って停めておいた
自転車の浮いた後輪はしゃこんしゃこんとペダル毎元気に回り、左右交互に踏み下ろす明らかな躍動がある物の漕ぎ手の姿は見て取れない。
先輩は着くなり聞いて当然の調子で「これから私△がこの自転車を祓います」と
漕ぎ手たる□は
故に現場を目の当たりにした後輩の悔恨に引き止められ、待たねば帰らねば慰めねばの一心で今日へ至っている。
それらは本邦の妖怪“火車”“輪入道”に通じ
よって今
「このチャリその物を死者を連れゆく妖怪と
言うが早いか先輩は持ち込んだポリタンクの中身をだっぱだっぱと自転車に掛け取り出したマッチで火を付ける。
赤々と燃え出す自転車の回り続ける後輪の中央に、
□は後輩を見付けると喜んで呼び掛けたようだった。
声なき招きに応じて後輩はふらりと自転車へ覆い被さり、めらめら燃え上がって透けて消え前輪の中に現れる。
引導を渡されたきょうだいは、空へ高々伸び上がった最後の炎の揺らめきに寄り添って昇天した。
*
□の死と幾度も帰る自転車を苦に自死したらしい後輩。
どこで知ったか
先輩には礼として2万取られた。
終.
自転車 壱原 一 @Hajime1HARA
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