第2話 春の底から見えていたもの
あの人はいつも、どこかガラスの向こう側にいるような人だった。
皆と笑いながらも、その瞳の奥で何かを「観測」しているような冷たさ。
そんな私が彼と親しくなったのは、文化祭実行委員になった時だっただろう。
仲良くなったきっかけは、きっと私が彼を「普通」として扱ったから。彼が見せる「見えないバリア」の向こう側に無理に踏み込もうとしなかったからだと思う。ただ、隣に座って他愛もない話をし、彼を特別に扱わなかった。
文化祭が終わるまでは、毎日のように夕方まで語り合い、中学校近くのコンビニで買い食いしたこともあった。それからも高校受験までお互いを励まし合うなど、そんなささやかな日常が、彼と私の間に当たり前の関係を築いたと、信じている。
しかし、時折彼の口から漏れる「脚本」という言葉や人間関係を分析するような発言に、私はぞっとすることがあった。彼は、まるで自分の人生。そして、私たちの関係を台本通りの演劇のように見ているようだった。私たちは、最期まで分かり合えていたのか、そうでないのか。
きっとそれを問い続けること自体が、もう意味のないことなのかもしれない。
あの頃は、あなたには私より大切な人が居た。
もう一度、あの頃の彼に会えるなら、伝えたい。私にとって、あなたというかけがえない存在は、筋書きを超えて大切だったと。
高松真央
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