魔王の息子なんだけど親父がうざいから勇者に転職することにした。

「ルイ様。おはようございます。今日も縁談の話があるので早めに支度なさってください」

　ある日の朝。いつものように目を覚ますしたルイ。待機していたメイド達は、その寝巻きをひっぺがえすようにはぎ取ると、スーツのような動きにくい服を着せていく。

「…あー…おはよう…今日の縁談?最近毎日な気がするんだけど…断っといて」

「ですがルイ様…もう17になりますのにご結婚どころか婚約すらしていないのはさすがに…」

「僕は結婚なんてする気ないの!あと、1人で着替えられるから!ちゃんと起きれるから!」

「あ、ルイ様…」

　ルイはメイド達の間をするりと抜けると着ていた上着を脱ぎ捨てて部屋を飛び出した。

ーーー

「ルイ。どこに行く」

「…!お、親父…」

　ルイが城の門を乗り越えようと塀に足をかけた瞬間、その足は今この世界を支配している魔王──コンプラストに掴まれた。

「また縁談を断るそうだな…俺に逆らうとは良い度胸だ」

「うっせえクソ親父!なんでお前なんかの言いなりにならなきゃなんねぇんだよ!」

「黙れ馬鹿息子!」

「…グェッ!」

　ルイが怒鳴るとコンプラストは掴んだ足引っ張りそのまま地面に叩きつけた。

「この世界は俺の玩具（おもちゃ）だ。息子であろうが俺の気に食わないものは全て消す!わかったか!この馬鹿息子!」

「…ガハッ!」

　コンプラストはルイを蹴飛ばすとそのまま城の方へと戻っていく。

「ふざけんな!あのクソ親父…ッ!絶テェ殺してやる!」

　ルイは拳を強く握りしめるとそれを地面に叩きつける。

「魔王なんて!時代遅れなんだよォ!」

　ルイがその場から去るとそこは小さなクレーターのように陥没していた。