第9話

 僕はたしかに眠ったのだ。だが、目覚めたのだ。

 目覚めたところは真っ暗で息苦しいし、体の周りがゴチャゴチャとしていて、居心地が悪かった。というか、僕はまだやり残したことがあるんだ、と、真っ暗闇の中で暴れた。すると、自分の目の前がガタと動いた手ごたえがあった。手ごたえがあったところを思い切り蹴っ飛ばすと、目の前にあった何かが外れて、真っ白な光に包まれた。

 体を起こして見回すと、僕がいたのはさっきまでの葬儀の式場だった。今でも思い出す。僕を見る人たちの真ん丸とした目が。そう、なんと僕は葬儀の棺桶の中で蘇ったのだ。

 僕は一番奥にいる葉山に気づくと、すかさず「好きだ」と叫んだ。葉山に好きって言ってない。眠る前、自分の想いを伝えずに消えるのは嫌だと思ったのだ。だから蘇ったのか?それはわからない。

 葉山が席から立ち上がって、僕のほうに駆け寄ってきた。もはや突進のように胸に飛び込んできた葉山を受け止めた。すると、とてもいい匂いがした。


 これが僕に起きた臨死体験である。なぜこんなことが起きたのかはわからない。ただ、僕にあったのは強い未練だった。都市伝説のように語り継がれている、臨死体験を経た人々には、僕と同じように死んでも死にきれない思いがあったのかもしれない。

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ある男子高校生の臨死体験日記 @jori2

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