第3話 ズレ始めた目的

 

 書き始めの頃は大変……では無かった。


 すらすらと書けるし、今まで手を出さなかった自身に首を傾げる日々。


 面白い― ―


 世の中にコレほど楽しい事があるのだろうか。


 今までモノクロに見えていたセカイが色付く。


 没頭。


 ひたすら没頭し続ける。


 睡眠時間を削り、食事に掛ける時間も簡略化。


 3カ月で8キロ痩せる程に打ち込んだ。


 初めて作り上げた子達には驚かされた。


 全く言う事を利かないのだ。


 彼女や彼は暴れ、必死に心情を吐露し、作者でありながら私は涙した。


 一種のトランス状態であったのだろう。


 どれも考えたセリフでは無く、朝起きると見覚えの無い文章が並んでいる。


 そんな毎日。


 現在の私を見れば、きっと大いに驚く事だろう。


 今読めば酷く稚拙な文章だ。


 文章力が低く、小説の基礎すら守れていない。


 評論家からすれば、正に駄文。


 読むに値しない、と唾棄される存在。


 でも― ―


 読み直した時、私は泣きそうになった。


 キャラクターの想いも、そこに込められた激し過ぎる熱も。


 現在の私には無いものだったから。


 いつの頃だったのだろう。


 読者様が読み易いように、文章を練習しないと。


 弱点を無くさないといけない。


 上手くならないといけない。


 そう考え― ―


 


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