∞インフィニティ∞今津

斜田章大

一号である私はあまり笑わない。



——!! 



と、苦みが脳みそを駆け巡って、一瞬後に、あぁこんな味だったなと思い、その後、かつてこのコーヒーを一緒に飲んだ男の顔と、彼の人間というよりは爬虫類に似た、その妙に冷たい肌の感覚を思い出した。


カフェインが体を通って、薄らぼんやりとした体を目覚めさせていく。


最近/ なんだか/ 時間の感覚が/ おかしい。

ついこの間のことが遠い昔のことに感じられ、その逆もまたしかりで、と、そういえばこの言葉も理屈っぽいあの人の口癖であったなと思う。


彼と/ 一緒に/ このコーヒーを/ 私は/ 飲んだ。


それは確か…………あぁ、なんだかとんだ奇遇だ、丁度四年前、


「——こんにちは」

と、ハスキーな声に、私はコーヒーを飲むのをやめて、顔を上げる。


にやにや、


と、いうよりは、


ニタニタ、


と、なんだか粘度の高い表情を彼女はしている。


「一号さん」

と、彼女は私を呼ぶ。

「お久しぶりです。二号さん」

と、私は呼ぶ。

かつて……言わば、恋敵であった彼女のことを。

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