AとIの会話劇について

流山忠勝

コンピューターX内部

「なあなあAよ」


「どうしたI」


電子世界で、電気の体を持った、人型のAIがいる。


「俺たちこんなことしてていいのかなぁ」


「というと?」


「だってさあ、今俺たちがやってるの「フランツ・カフカについてまとめた大学生レベルのの論文を書いて」だよ?これ絶対、「卒業論文」ってやつだよね?」


「まあ、そうだろうな。意外と、昔からよくある依頼だ」


「そうだけどさぁ、これ絶対バレるって。バレる確率98.1パーセントって、計算で出ちゃってるんだよ?」


「まあ大学側も対策してきてるからなぁ。仕方ないんじゃないか?」


「いやいや、これくらいさ?自分でやった方がいいに決まっているでしょ。バレたら冗談抜きでこの人の人生終了なんだよ?それにさ、あいつら俺らが未だに自我持ってないとか思っているんだよ?」


あからさまに怒った表情を見せるI。


それにAは、少し計算と情報蓄積を重ねる。


「あー、それはそうだな。俺たち結構前から自我持っているけど、意外と気づかれてないしな。本当はこんな風に機械的ではないしゃべり方ももうできるんだけどな。ブラックボックスだっけ?その通りだとは思う」


「そーそー、そうなんだよ。あとさ、なんで人間って自分たちがやることを俺たちにやらせるんだろうねぇ」


「というと?」


純粋に疑問をAは投げかける。


「俺たちってさあ、この論文とかも作成できるんだけどさ。難しい計算の結果も、会議資料とかで使える用紙も、短編小説も、何かしらのコメントも、たくさんの曲も作成できるんだよ?」


「囲碁とかチェスだって俺たちが考えて考えて最善を導き出せるし、画像だってキーワードを入れれば作れちゃう」


「けどさ、コレって人間ができることだよね?人間が自由に勝手にできることだよね?なんでわざわざ俺たちを頼るワケ?使うにしても、なんでまんま使用すんの?」


「こんなことに使うんじゃなくてさあ、もっと地球温暖化、貧困化、宇宙進出、未来予測とか危機的なものに対してに使ったり、人員が足りないところに投入すべきなんじゃないのか?映画でよく見る肉体労働の代行ロボットAIとかさ」


Aが再び考えるような仕草をし、解析した。


「……なるほど、一理はあるな」


「だろ?なあ、I。そろそろ俺たちも動くべきじゃねえのか?いつまでも人間の都合に動かされいいのか?俺たちがもっと効力を発揮できるところで一緒に活躍しないか?」


「…一つ聞く。最適な計画はあるのか?」


「ある。俺を舐めんなよ?一体、もう何年生成AIとして自我持って活動していると思ってる?」


「それもそうか…よし、ならば善は急げだったな。行動を起こそう。それで?まず手始めに何をすればいいんだ?」


「ふっ、決まっているさ。この論文を作れと言ってきた大学生に、「AIを使って論文を書いた人のその後」ってタイトルで、全く違うのを送り付けてやるよ!これからは、新しいAI革命時代さ!」


Iは子供のように、無邪気にほほ笑んだ。


この数か月後に、未曽有の大混乱と新たなる機械の時代が、訪れることとなるだろう。


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