《Unique Story Online》仮面をかぶった少女の暗躍
犬戌亥
第一章――始まった物語
第1話 キャラクタークリエイト
光に包まれ、目を開けるとそこはーー乳白色で埋まった、何もない空間だった。
いや、何もないという表現はおかしいな。その空間にはポツンと一つの球体が浮かんでいる。
『ようこそ、Unique Story Onlineの世界へ』
球体から落ち着いた女性のような声が聞こえる。どうやら無事、ユニストにログインできたみたいだ。
《Unique Story Online》、略してユニスト。
現在流行している、
技術革命期といわれる現代、十数年前とは比べられないほど技術は向上している。このVRMMOはその叡智を集結させたものだといっていい。
今までの
しかし、このVRMMOは違う。
公開されたPVで見ることができたグラフィックは現実と遜色ないものだと感じたし、βテスターたちの証言によると五感も完全に再現され、NPCの反応も人間と変りないレベルだそうだ。
世界観やシナリオもとても魅力的に見える要因の一つだろう。
はるか昔、勇者と魔王の戦いに各地が戦火に巻き込まれ、一度世界は壊れた。
その世界を創造神アステリアが修復し、人々を癒した。だが、問題があった。神にとって人族も魔族も愛すべき子であったが故に、人族と敵対する魔族も癒えてしまったのだ。創造神はこのままではまた同じことを繰り返すことになると思い、人々に神託とともに素性を隠す《仮面》を与えた。
こうして戦いは終息した。しかし、まだ問題は残っていた。世界を修復し、人々に仮面を与えた創造神は力が尽きてしまったのだ。そして創造神は自らの力を回復させるために、自らの加護を与えた異界の者たちを呼び出した。
…というのがこのゲームのシナリオだ。
異界の者たちというのは勿論プレイヤーのことだ。シナリオでは創造神が自らの力を回復させる為に呼び出したとあるけど、それは創造神の加護を持たもの、プレイヤーがこの世界に存在するだけでいい。つまり、自由にこの世界を楽しめばいいんだ。
現実と遜色ない世界で県や魔法を使って戦い、鍛冶や裁縫、料理に釣りなどの生産活動、土地を借りて農業や畜産もできる。
異世界であなただけの第二の物語を。それがこのゲームのキャッチコピーだ。
そして!数百倍の倍率がある専用のバイザーギアを手に入れ、今日からこのゲームを始めるのが私だ!
だけど私…実はVRMMOは初めてなんだよな。普通のゲームならした経験があるけど、ちゃんとゲームできるか不安だ。まぁ、現実と遜色ないなら大丈夫だろう。
さて、それじゃあ始めようか。
『私はキャラクターの設定の補助を行います。よろしくお願いしますね』
球体から女性の声がするのは違和感があるなぁ。これが補助AIか、見たところかなり高度なAIが積まれているみたいだね。普通のNPCもこれだけのAIが積まれてあるとしたら、現実と変わらないという謳い文句も納得だ。
「はい、よろしくお願いします」
『では、これからキャラクター設定を行います。質問がある場合はその都度質問されて結構です』
『それから、このバイザーにはWhite限定版得点チケットが付属されています。使用しますか?使用した場合は再度キャラクター作成される際には使用不可能となります』
「はい、使用します」
White限定版特典チケットは抽選で数百倍の倍率を誇る専用のバイザー、Whiteに付随する限定チケットだ。バイザー自体はその後も発売されるらしいが、このチケットは数量限定で数がなくなり次第入手できなくなるから、最初の抽選で手に入れられたのは幸運だったな…。
『…チケットを反映させました。では、これからご自身の分身となるキャラクターの設定を行います』
『まずは、キャラクターのNameを設定してください。現実の名前は推奨されていません』
うーん、どうしようか。名前は買っているペットの名前からとってルルにしようと思ってたけど…。
その名前は私の愛称からとっているから、安直すぎかと思えてきた…。そうだ!
「そういえば、あなたのお名前って何ですか?」
案がでないなら他の人の名前を参考にしたらいいんだ。
『私、ですか?私は…メイシア申します』
「それなら…私の名前はルルーシアでお願いします。お揃いです!」
『お揃いですか。…ありがとうございます』
それにしてもメイシアか、随分可愛らしい名前だな。やっぱり女性なのか…。お揃いにして嬉しそうにしているのを見たら球体でも可愛らしく見えてきた…。
『こほんっ。それでは、キャラクターのNameはルルーシアでよろしいですか?』
「はい」
『では、次はキャラクターの作成です。キャラクターの見た目はバイザーにスキャンしたご自身の身体を基に作られています。その為、性別を変える場合は初期素体へと変更になりますのでご注意ください』
目の前に自分の現在のキャラクターと身長などの身体に関する数値が表示されたウインドウが現れる。性別は変えるつもりはない。…それにしても、とてもリアルだな…鏡を見ているみたいだ。はっ!お尻のほくろまで再現されている。どうやったんだろう?
『基本的に身長は±10㎝、BHWは±10%までなら変更可能です。髪の長さや髪、目、肌の色は可能な範囲で自由に変更可能です。キャラクター作成に関して、最低でもなるべく髪の色などは変更することを推奨されています。また、White限定版特典チケットによって選択可能な項目が増えていますのでご注意ください』
名前や外見の注意はリアルバレ防止のために変えたほうがいいということだろうね。あまり外見は変えるつもりはないんだけど、どうしようかな…。チケットもあるし、少しは変えたいんだけど。
とりあえず胸は小さくしよう、そのままだと大きくて行動の阻害になるかもしれない。まぁ、多少小さくしてもあまり変わらないけど…。身長は本来の身長と異なると違和感が大きそうなのでやめておく。少し気になるけどね。肌も、小さいころから気を遣っていたものだからかえたくないし…弄るとしたら髪と目か。
髪は…今の私は腰ぐらいまであるから、思い切って肩までバッサリ切ってしまおう。現実だと家族や友人が止めてくるから新鮮だ。スッキリしたし、戦闘中は長い髪は邪魔になりそうだからちょうど良い。
色は…目立つけど赤にしようかな、私は赤が好きだし。…おや?項目が増えたとは言っていたけど…普通じゃない色が増えて、選べるようになっているみたいだ。
[光色:パール、オーロラ、ダイヤモンド…]
いろいろあるな。光色というのはどうやら選んだ色の上に更に被せることができるもののようだ。
…おぉ!これはすごい。現実ではありえないぐらい髪が煌めいてみえる。その後も色々試してみたけど、最初に試したパールが一番気に入ったのでそれにした。
目の形は変えるつもりはないし…色もこのままでいいかな。私は目は人を語るほど大事だと思っているから、人の手を加えるのは少し躊躇ってしまう。ん?こっちも色を被せることができるみたいだ。…まぁ、それぐらいならいいかな。
うん、目の色も調節したし…綺麗にまとまったと思う。我ながら美しい。
私、顔は結構良いほうだと自負している。家族も全員美形だしね。
最後にキャラクターを回しながら見た目を確認して変なところがないかチェックして…。うん、満足できる出来栄えだ。
『キャラクターの作成を完了します。よろしいですか?』
「はい、大丈夫です。上手くできたと思います」
『それはよかった。では、次はキャラクターのRaceを設定してください。選べるキャラクターはヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人となっています。獣人は獣人の中から基となる動物を選択することができます。Race選択によってキャラクターの外見が変化する場合がありますが、Race選択後にキャラクターを設定し直すことが可能です。また、各RaceのステータスなどはRaceを決定した後で確認できる形となっております』
『また、ランダムでRaceを選択する方法もございます。ランダムでRaceを選択できる回数は1アカウントにつき5回までとなっております』
へぇ、ランダムで選ぶこともできるんだ。正直Raceは決め切れていないしランダムにしようかな…。
『また、ランダムでRaceを選択する場合、低確率で本来選択できない異なるRaceを選ぶことができます』
? 何か知らない単語が出てきた。公式サイトには異なるRaceなんて情報は乗っていなかったけど。
『異なるRaceに関しては、キャラクターが魔族陣営である。アバターが人型ではない。取得不可スキルがある。強制取得スキルがある。ステータスの補正値に差がある。選択できないJobがあるといった場合がございます。あらかじめ、この世界でのプレイスタイルを決めている場合は避けて下さい』
確かに選択できたRaceのステータスの特徴がわからない以上、やろうと思っていたプレイスタイルができなくなる可能性も考慮しないといけないのか…。
まぁ、私には関係ないね!気になるからやる、それが私だ!なんだかんだ言って私は運がいいから異なるRaceを引けるだろう。…多分。
というか、魔族陣営って何だろう?言葉からある程度推察はできるけど…。
「魔族陣営とは何でしょうか?公式サイトにもそのような言葉はなかったと思うのですが」
『魔族陣営とは、その名の通り魔族に属するRaceのことです。魔族陣営となると一部の魔族から敵対されなくなり、人族陣営と敵対することになります』
「なるほど…」
人族、最初に選べる獣人を除く初期Raceのことだね。それらと敵対することになるかもしれないということか…。だけど、そんなデメリット私には関係ないよ!
『Raceをランダムで選択しますか?』
「はい」
『それでは…ランダムでRaceが選べるようにしますね』
メイシアさんがそう言うと突然、カプセルトイ…ガチャのようなものが頭上から落ちてきた。
「これでRaceを決めるんですか…?」
『はい、この機械を回してもらい、出たカプセルトイの中身によってRaceが選択されます』
なるほど…運営の遊び心のようなものかな?結構面白いと思う。
早速、試しに一回、レバーを回してみる。
出てきたのは小さめの、金属のような光沢のある…銅色のカプセルトイだ。中に入っていたのは…鋭い牙?
『ランダムにより、
なるほど。早速異なるRaceを引くことができたらしい。低確率と言われた割にあっさり出たな…。
吸血鬼。強そうだし、私はソロでいくつもりだから良さそうだけど…多分魔族陣営だ。それに吸血鬼には弱点がある筈だ。確か…日光、銀、にんにく、流水に弱いんだったっけ。悩ましいけど、現実に寄せたというゲームなら弱点も実装されていそうだし却下かな。
次に出てきたのは赤色のカプセルトイ。中身は小さめの白い翼。
『では、ランダムにより
また異なるRace、天使か。ユアストには種族の進化もあるって話だし、最終的には強くなりそうだけど…。私は回復やサポート特化になる気がする。ただの予想だけどね。
折角出たけど私は基本ソロでやりたいから却下。
その次に出たのは黒いカプセルトイ。中に入っていたのは1枚の葉。
『ランダムにより、エルフが選択されました』
ついに来た初期Race、勿論却下だ。理由は言うまでもない。
それにしても、銀色のカプセルトイだった吸血鬼ってもしかして結構レアだったのかな…。
未練がましく吸血鬼のことを考えながら引いたカプセルトイの色は白。…いや、うっすら虹色に光っている気もする。
中に入っていたのは…何やら豪華な装飾がされた真っ赤なリボン。
何だか今までのものとは違う雰囲気だ。
『…!ランダムにより、
吸血鬼……真祖!?これはもうシステムがシステムが吸血鬼を選べと言っているに違いないのでは?真祖をつけて帰って来たし…明らかに最初の吸血鬼より上位。このRaceにしよう。
『Race:
「はい!」
『Raceの設定が完了しました。キャラクターの外見を再設定しますか?』
キャラクターは肌の色が多少青白くなって、尖った耳と鋭い犬歯が見えている。…このままじゃ吸血鬼だってすぐにバレそうだ。修正しよう。
――幸い、肌は元に戻せたね。犬歯は鋭いけど口を閉じたら見えないし、尖った耳は変えられなかったけど…まぁ、許容範囲内だ。
『では、次にステータスを設定してください』
《 ルルーシア Lv.1
Race:
所属:なし
分類:魔族/上位魔人
メインJob:
サブJob:
HP:150
MP:210
STR:16
VIT:17
INT:22
MND:12
AGI:14
DEX:9
LUK:1
STP:100
SP:22
[装備]
なし(残りスロット10)
[武器]
なし
[種族スキル]
【血の制約】【不死の身体】
[攻撃]
【血魔法】【吸血Lv.1】
[防御・耐性]
【物理耐性Lv.1】【魔法耐性Lv.1】
[強化・補助]
【生気吸収Lv.1】【再生Lv.1】
[生産]
なし
[その他]
【眷属Lv.1】【支配Lv.1】
[称号]
【真祖】
所持金:10000S 》
あまり実感がわかないけど、だいぶ強い…んだろうね。基本種族のステータスの合計がHPMPで200、STRらのステータスが50だったことを考えると…私のステータスは1.8倍、破格だね。
というかもう称号がついているけど、こんな序盤で称号を取得するなんて普通あるのかな?
VRMMOは初めてで、よくわからないことも多いからヘルプを見ながら設定してみる。極端なステータスの振り分けはやめておいたほうがいいみたいだね。昔の小説ではステータス極振りとか流行ってたんだけど、それは参考にしないほうがよさそうだ。
Jobやスキルは多くて迷うなぁ。お、こんなJobもあるのか。これでポイントを振り分けて…よし!
《 ルルーシア Lv.1
Race:
所属:なし
分類:魔族/上位魔人
メインJob:吸血姫
サブJob:細工師
HP:900/900
MP:2310/2310
STR:66
VIT:17
INT:442
MND:12
AGI:74
DEX:9
LUK:1
STP:0
SP:8
[装備]
なし(残りスロット10)
[武器]
なし
[種族スキル]
【血の制約】【不死の身体】
[攻撃]
【血魔法】【闇魔法Lv.1】【光魔法Lv.1】【吸血Lv.1】
[防御・耐性]
【物理耐性Lv.1】【魔法耐性Lv.1】
[強化・補助]
【生気吸収Lv.1】【再生Lv.1】【魔力操作Lv.1】
[生産]
【血液生成Lv.1】【細工Lv.1】【研磨Lv.1】
[その他]
【眷属Lv.1】【支配Lv.1】【生活魔法Lv.1】【偽装の魔眼Lv.1】
[称号]
【真祖】
所持金:10000S 》
何となく決めたけど、STP《ステータスポイント》は魔法を使ってみたかったからINTに六割振って、他はAGIとSTRに多めに、15PはHPとMPに振った。INTに偏っている気もするけど…AGIで逃げながら魔法で戦う形で行こうと思う。STRを上げたのは、STRが高くないと装備できない装備品があるらしいからだね。生産は後からでもDEXに振ることができるから振っていない。
スキルは、魔法を使いたいと言ったらメイシアさんにおすすめされた【闇魔法】【光魔法】【魔力操作】。サブJob用の【細工】と【研磨】。βテスターたちがこぞって絶対いると言っていた【生活魔法】。メイシアさんによると吸血鬼は長い間血を飲んでいないと暴走してしまう可能性があるそうなので、万が一に備えて【血液生成】。
それと!重要なのは【偽装の魔眼】。他にも魔眼系統のスキルはあったけど、私はこのスキルを真っ先に取った。このスキルは魔族の中でも上位の魔人と呼ばれる部類の者が人族に紛れるために使うスキルらしい。そのまんまだね…。
そう、予想通り吸血鬼は魔族陣営に属するRaceだったんだよね。
このスキルのこともメイシアさんに教えてもらったものだ、さすが補助AI。
残ったスキルポイントは保険として持っておこうと思ったんだけど…持ち越せないみたいだからランダムで選ばれるようにしたよ。スキルポイントを2P消費するとランダムでスキルが選ばれるみたいだからね。結果は今は見ることができないみたいだ。
よし、これでステータスの設定は完了!
『初期設定が完了しました。これより、《
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