同意

紙魚。

同意

最初に、確認がある。


 あなたは、

 同意している。


 何に対してかは書かれていない。

 だが、ここまで読んでいるという事実だけで十分だった。


 この町では、六人が殺された。


 全員、夜。

 全員、ひとり。

 全員、抵抗する前に喉を切られている。


 警察は共通点を伏せた。

 それを公表すれば、同じ条件の人間が大量に発生するからだ。


 現場には毎回、スマートフォンが落ちていた。

 画面は点いたまま。

 ページは途中で止まっている。


 どれも、

 最後まで読まれていない。


 それは、

 まだ言葉になっていない。


 犯人は捕まっていない。

 理由は単純だ。


 犯行は、誰かが読んでいる間にしか成立しない。


 あなたは、まだ外にいる。


 七人目が出ていない理由がある。


 条件が一つ、満たされていない。


 それは――

 証言。


 殺された六人は、全員、途中で読むのをやめた。

 恐怖も理解も、言葉にしなかった。


 だが、あなたは違う。


 あなたは、最後まで読んでいる。

 そして今、何かを書こうとしている。


 人は、

 意味を知ったあとで、

 それ以前の文章を読み直す。


 あなたは、

 すでに読んでいる。


 同じ文章でも、

 読む順番が変われば、

 別の内容になる。


 証言は、

 一定の条件を満たした場合、

 公開されず、

 通知もなく、

 記録から除外される。


 あなたは、まだ外にいる。


 外にいるあいだは、

 記録されない。


 ここで、閉じてもいい。


注意書き


※本作はフィクションです。

※本作を最後まで読んだ時点で、物語構造および演出への同意があったものとみなされます。

※コメントは任意です。

※表示内容は、閲覧環境やタイミングにより差異が生じる場合があります。

※コメントは投稿後、編集・削除が可能です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

同意 紙魚。 @shimi_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画