機関銃少女とスナイパー大学生
黒羽カラス
第1話 ドラマは突然に
「なんで突然、雨が降るんだよ。今日の天気予報は曇りだろ。え、仕方ないって? そりゃ、そうなんだけどさ。たまのスカートなんだし、タイミングが悪いだろ。なに出してんだよ。見ればわかるよ、ハンドタオルだろ。濡れた髪やコートを拭けって言いたいんだよな。そんなことはわかってるんだよ。
なんで不機嫌なのかって? お前、すぐに出してきたよな。ガサツな女子高生はハンカチも持ってないって勝手に決め付けたんだよ。その態度がなんか、感じ悪い。もちろん、借りるけど。まあ、助かったよ。そっちもなんか言いたそうだな。
テーブル席の方が良かった? 窓際のカウンター席でいいんだよ。向き合ってハンバーガーは食べにくいし、コーラを飲むところを見られるのもなんか嫌だし。お前がよくてもこっちがダメなんだよ。それくらいわかれ。それでこのあと、どうするつもり? テーマパークは屋外だし、雨だと全く楽しめないよな。どうしようじゃない。こっちが
カラオケ? 定番だな。そんなのは普通の日でも行けるだろ。それと今日は日曜日で割高だ。これだから金持ちのボンボンは困るよな。金銭感覚がまるでなってない。なにが違うんだよ。バイトのおかげ? 大学生は気楽でいいよな。どうせ遊ぶ金欲しさにやってんだろ。こっちはバイト禁止だからな。超有名進学校はツレーは。
なに不貞腐れてんだよ。ボンボンが気に入らなかったのか? なんでもおごるお前が悪い。割り勘でいいんだよ。お前、ろくな女と付き合ってこなかったんだな。男だからじゃない。それが対等ってもんだろ。喋り過ぎたんでコーラ飲むわ。
走ったあとは格別だな。なんだよ、いきなり。受験勉強はちゃんとやってるし。英語は苦手な方だが、B判定は出てるんで絶望的な状況ではないね。いやいや、お前に家庭教師が務まるかよ。傾向と対策? なんでお前が教えられるんだよ。志望校を話したことないだろ。はあ!? なんで知ってるんだ。
ニヤニヤすんな。別にお前がいるから受けるんじゃない。そう、校風が気に入ったんだよ。学部も多いし、それなりに名の通った大学だからな。それよりも今日の予定はどうするんだ。映画とかは無しな。あんなのは一人でも観られる。なんだよ、急にモジモジして。耳も赤いし。まさか、具合が悪いのか? 雨に打たれて酷くなったとか? 違うんだな。ウソはやめろよ。わかった、信じる。
先に渡すってなにを? クリスマスプレゼントなら早すぎだろ。なんだよ、はっきり言えよ。これ? なんか小さいな。ここで開けてもいいか。いいんだな……なんか触り心地の良い箱が出てきたんだけど。厚みがあるし、これって。耳が真っ赤だぞ。なんか言えよ。いいんだな、ここで開けるからな。
指輪なんだけど。先端のこれ、ダイヤなのか? えっ、合成ダイヤじゃなくて天然!? もしかして今まで会えなかったのは、これのためだったりして。バイトの掛け持ちでもしてた? やっぱり、そうなんだ。私の誕生日が四月だから選んだと。これって高いんじゃないの? これもおごりの内だろ。さっき対等じゃないって話をしたよな。だから、これは受け取れない。
そうじゃないってなんだよ。そうだろ。プ、プロポーズ!? い、いや、なに言ってんの。そんな話、したことないでしょ。確かに今はしてるけど、急にな、なによ。ずるいでしょ、そんなの。こっちだって、いろいろ考えがあって……それに指に合うかわからないし。その心配はない? なんでよ。今度は
その、まあ、二人とも学生だし。来年の大学受験に向けて、えっと、大事な時期もあって。うん、指輪はびっくりしたけど、イヤとかじゃないから。なに笑ってんのよ。私がモジモジして耳が赤いって。そっちだって、そうだったじゃない。まあ、お互いカウンター席で良かったってことでしょ……バカ」
降り続けていた雨は弱まり、灰色の雲が薄れて淡い光が見え始めた。
機関銃少女とスナイパー大学生 黒羽カラス @fullswing
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます