第3話~サイエンタワールドの惨事~

 一つの世界…それも、別の世界線の一つの世界の復興をしてくれ、という依頼を受け向かったカセリナとクドルス。…二人の男女が向かった先では。不思議な現象が起こっていた。

 それはノイズが一度かかったのちに現れる、過去に起こっていたものと思われる虐殺らしき光景と、大人しそうな印象を見る者に持たせる黒い髪の男性の姿。…突如として現れたその男性の言葉から、男性がいわれの無い罪で死刑の判決を受けた人物だというのはわかったのだが。それでもすべては理解できずにいる。…そもそもの話、なぜこの男性がサイエンタワールドに現れているのか。その関連性がクドルスとカセリナの二人には全然つながっていなかった。


――ディナスさんから黒龍という人物が裁判によって死刑にされたという事を聞いてはいたけど、まさかそんな裁判で死刑にされていたなんて。


 裁判の詳細まではディナスからは知らされていなかったからこそ、カセリナはその裁判の詳細を聞き驚いた。…カセリナ自身、裁判という物がどういうものなのかわかっているつもりではあった。公正な判断のもと、被告人とされている人物を裁く行い。…だというのにいわれの無い罪を人にかぶせたうえ、その罪で死刑にするなど…カセリナはあまり聞いていなかったからだ。

 確かにいわれの無い罪をかぶせられた人が死刑の判決を受けた例はいくつか聞いたことがある。…さらにはそのうちの何人かはその死刑を執行されたという話を資料で見たことがある。…だけども。弁護士も全く存在しないような圧倒的に不利な状況で死刑の判決を下された、という話は…カセリナ達にとっては初めて聞く話であった。


――あんなのは裁判じゃない。…公開処刑も、ひとしいものだ。


 心の中で毒づくカセリナ。…と、彼女達の視界にまたもやノイズがかかり始めた。


「またノイズ…一体、この世界で何が起こっているっていうの。…この世界に、未練を残したものたちが、私達に見せているものだとでも言うの?」

「…かもしれません。この滅びよう。酷い行いが行われていたか…、もしくは何かしらの天災があったか。そのどちらかしか考えられません。」


 カセリナとクドルス、その二人がノイズの発生する原因について考え行く。…そうしている中…二人にかかっているノイズが晴れ。…ある光景を二人は見る。…それは、前髪を切りそろえ眼鏡をかけた一人の少年が下卑た表情を見せ、水色の体に耳の先が黄色いかわいらしい印象を持たせる生き物と。四つの細い棒の先にランタンの様なものを下げ。その中心部分に紅色の人魂の様なものが浮かんでいるという姿をした謎の生き物が、逃げ惑う生き物達に対して電撃と炎をそれぞれ放っているという光景。

 クドルスとカセリナがその光景を見ている限りでは、少年の指示に従っているとされている二匹の生き物達が逃げ惑う生き物達に襲撃を仕掛けているように見える。…唇をかむカセリナとクドルスに。ノイズのかかった姿をした男…黒龍が声をかけた。


『僕が死刑に処された後に、こんなことが起こっていただなんて…。サイエンタワールドに生息していた、サイエンスクリーチャー達に申し訳なくなってくるよ。…ごめん、みんな。』


 謝罪の言葉を述べる黒龍。…その黒龍に対して。シルニカは静かに言葉を発する。


「…貴方は悪くありません。…悪いのは、襲撃を一方的に仕掛けた、あの前髪を切りそろえた少年の方なんです。…私達は、サイエンスクリーチャー達に救いの手が差し伸べられた並行世界から来ました。…その世界では話によれば貴方が死刑になり、それが執行された後。サイエンスクリーチャー達は私達の仲間がもともと所属していた組織に虐げられ続けていたんです。…それを救ったのが、何処からともなく現れた、スタイリッシュな姿をしたロボット達。そのサイエンスクリーチャーという生き物達はあともう少しで絶滅するというところで、スタイリッシュな姿をしたロボット達によって命を救われた、と聞いています。」


 シルニカのその言葉を聞いてどこか柔らかな笑みを浮かべる、ノイズのかかった姿をした黒龍。…その男は少しの間を持ったのちに。静かに言葉を発する。


『そうか…。そっちの世界では、サイエンスクリーチャー達は救われたんだ…。…フフフッ、なんだか、良かった、って思えるよ。…貴方達の世界では平和に暮らす事が出来たようで。』


 黒龍がそう言葉を発したのちに…一筋の涙が流れ落ちていく。…それは安堵からくるものなのか。…それとも。しかして、カセリナとクドルスが前を向けば。想像を絶するような、地獄と表現するにふさわしい光景が広がっている。


――この光景。…目をそむけたくなるけど…この光景から、目を背けちゃいけない。…目の前に見えているのは、ここで起こっていたものとされる出来事なのだから。


 水色の体の、かわいらしい印象を持たせる生き物が邪悪な表情を浮かべ、逃げ惑う生き物達目掛けて電撃による攻撃を仕掛け。それらが命中した生き物達がその一撃の内に命を落としていく。…その光景が消え、荒れ果てたサイエンタワールドの光景が見えた時。…カセリナ達は再び復興作業を進めていった。

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