終末世界の転生傭兵は、かつての愛機と再会して無双する〜英雄になり損なった少年は、相棒と共に2度目の人生で英勇となる〜

ユーラ@KKG&猫部

第0話 それは永遠の別れと成り得るか





数十年にも及ぶ戦争で荒れ果てたとある世界にて、悲壮感漂う通信を、少年はボロボロになったコックピットで聞いていた。



『司令部より、作戦参加全部隊に通達。…防衛線が崩壊した。作戦は、失敗だ』



少年のヘルメットを脱いだ頭は血に染まり、肩にはパイロットスーツの下から傷口が覗いている。


だが痛みに顔を歪ませながらも、少年は口元に笑みを浮かべヒビ割れたディスプレイを眺めていた。


「ははは…とうとう敗けた…か」


《搭乗者のバイタル低下を確認、緊急延命措置を実行しますか?》


「いや、どの道俺はもう助からねぇ。要らんことするな…グッ…」


痛む体を動かし、少年はコックピットハッチを開けて転げる様に地面へ降りると、ボヤけ往く視界を上に向ける。


ここは元々最前線の隠匿格納庫だったが、天井が崩落し空を眺める事が出来た。


「人口の灯りが無くなったから星がよく見える…皮肉なもんだなぁ…」


既に陽は西の空へ沈み、数多の星が夜空を埋め尽くしている様子を記憶に焼き付ける少年。


そんな少年を、蒼と黒の人型は感情を映さない機械の眼で見つめていた。


-マスターの生存…我々に課された最大の役目を私は全う出来なかった。だと言うのに何故マスターはこんなに…-


瞳を輝かせているのか。と、一抹の疑問を抱き、人型はセンサーを少年と同様に空へと指向する。


《…美しいと言う表現は知識としては分かりますが、やはり感覚で捉えるのは私には難しい様です》


「急だな…でもまぁ、いつかは分かるんじゃね?俺と出会った時なんかマジでお前感情篭ってなかったけど、今じゃこんなんだ」


《確かに、マスターは私に多くの感情を教えてくれました。……故に分からないのです。何故自分の役目を果たせなかった私に、マスターが怒りを抱いていないのか》


冷たく無機質な声。その言葉には何処か自己嫌悪の感情が滲み出している様で、されど少年は人型の言葉を軽く笑い飛ばした。


「いや、お前が役目果たせてなかったら俺はどうなるんだよ。課せられた任務も全う出来ずこうして死に掛けてるんだぞ?」


《ですが——》


「あーもうこの真面目野郎。俺は別にお前に怒りは抱いてないし、ここまで共の戦ってくれてむしろ感謝してるっての。だからこそ、俺はんだしな」


言って、座った姿勢から仰向けになる少年。これにより、鈍色の破片が突き刺さった腹部が顕になった。


「もし、誰かがお前を見つけ出して乗る時に、俺の死体があったらたまったもんじゃないだろ?」


少年の言葉に、「自分はもう死ぬ。でも、お前はまだだ」と言う想いが込められていると人型は察する。


「にしても…ここで死ぬのか。結局役に立てず終いで…悪い、皆」


それだけ聞き取り、少年の心臓が停止した事を人型は認識し…静かにその言の葉を紡ぐ




-私のマスターはあなた以外にあり得ません-




と。











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