第5話 ヒーラーの助手に就職、そして、異世界生活
「ありがとうございました!先生は命の恩人です!」
部屋にはさっきまでの緊迫した空気はすっかりなくなり、和やかそのものだ。
「私の方のこそご心配おかけして、申し訳ありませんでした。それに彼を治すことができたのは、私だけの力ではありません」
そう言いながら、セインは私の方を見た。
「ああ、そうだな!そこの嬢ちゃんのおかげだな!」
おじさんも私の方を見る。
「あはは、うまくいって本当に良かったですよ」
私も何とか笑顔でその場をやり過ごす。
「じゃ、先生!お代は後で持ってくるからよ!それから、えーと、あんたは……」
「彼女はユーリさんといって、私の助手として今日から働いていただくことになっていた方です」
突然セインが割り込んできた。
え、何言ってるの?この人。
「なんだよ、そうなのか。やぁ、さっきは怒鳴っちまって、すまなかったな。俺はダンカンだ。この村では大工の棟梁をしていてそれなりに顔が利くんだ。何かあったら遠慮なく俺を頼ってくれ。コイツを助けてくれた貸しもあるな」
おじさん、もといダンカンさんは胸を叩いた。
「じゃあな、先生!嬢ちゃん!」
「本当に、ありがとうございました!」
こうして急患は無事帰宅できたのであった。
「本当に、ありがとうございました。彼を治すことができたのはあなたのおかげです」
「そんなことないよ。私は止血しただけで、最終的に彼を助けたのはセインなんだし」
本当にそう。
私が結界魔法を解除したのと同時に、セインは腹部だけでなく、足や頭の傷も一瞬で治してしまっていた。
恐るべし、治癒魔法。
確かにこれなら医学は必要ないわ。
「それにしても、ユーリさんも魔法を使っていらっしゃいましたが、治癒魔法、ではないですよね。あれは一体……」
セインは興味津々という目で私を見てくる。
「あぁ、あれは『結界魔法』と『浄化魔法』っていうらしくて」
「結界、魔法……浄化魔法?」
どうやらセインも知らないようだ。
「実は私も初めて使ったんだ。うまくいって本当に良かったよ」
「初めてであんなに緻密に魔法を使ったんですか?!」
今度は驚いた顔をし、と思ったらブツブツ何か考え込んでいる。
「ユーリさん!」
突然両手をガシッと掴まれ、
「先ほどダンカンさんにも言いましたが、もしユーリさんさえよければ……本当に私の助手になってくれませんか?!」
「えっ?!」
今度は私が驚く番だ。
「診察室に入ったときからの対応も終始冷静で、患者さんの状態をしっかり把握されてました!あの魔法も見事でしたし!それに……!」
「それに?」
「……それに、恥ずかしながら、私は血が苦手です。ヒーラーとして、あってはならないことなのは分かっているのですが、どうしても克服できなくて。でも……」
セインは改めて私と目を合わせた。
「でも、あなたが止血してくれれば、私はケガを治すことができます。あなたの力があれば、私は患者さんを救うことができるのです」
そして、セインは私に深々と頭を下げた。
「どうかお願いします。」
「……むしろ私からお願いしたいくらいだよ。これからどうしたらいいのか、全く分からなかったから」
改めて、目の前の空色の目を見つめる。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「ユーリさん……!」
パアッと顔が輝き、セインは私の手を握り直した。
こうして、異世界での生活が始まった。
幸いなことに、フラノ村のみなさんにも温かく受け入れてもらえた。
それに、セインの助手といっても薬草採取と薬の調合、薬の販売くらいで、初日のような重症患者は皆無だった。
(このままのんびり過ごすのも全然ありよね)
自分でも意外なほどこの世界の生活がしっくりきているし、なにより……この世界には誠吾そっくりの青年がいて、彼と一緒に暮らすこともできている。
でも、医師だろうとヒーラーだろうと。
職業がら予期せぬ緊急事態には常に狙われているのだ。
*あとがき
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