バッドエンドはふきとばせ!!
桜里ゆこ
第1話 異世界転生は交通事故から始まること多いよね
「はあ、やっと帰れる」
人がほとんどいないオフィス街の道をよれよれのスーツで歩く。
今日も上司のせいで帰るのは夜中だ。
私は
運の悪いことに、ブラック企業に入社してしまった25歳。
「くそぉ、あの鬼上司め」
〈これやっとけって言っただろう!だいだい、ガミガミガミガミ…〉
〈す、すみません…今すぐやります…〉
上司が離れると…
(いや、言ってねえよ!!ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
このように、鬼の形相でキーボードを連打することも少なくはない。
残念ながら、これはましな方だ。
おかけで、毎日寝不足の金欠、生活習慣も荒れっぱなしだ。
眠いと、四方八方にあるビルや車、街頭などの光が目に効くもので、
少しチカチカする。
今夜は綺麗な満月らしいが、夜空を見上げることすら面倒くさい。
昔はよかった方なのだ。
before
学生の頃は、好きなアニメ見たり、漫画を読んだりしていた、
比較的明るく、笑っていた女性が…
after
なんということでしょう。
今では、ゆっくりと過ごす時間がなくなり、
趣味にお金を費やせなくなっていったではありませんか。
表情も、死んだ魚よりも死んでいます。
全くもって、最悪のbefore,afterです。
さらに、会社では理不尽に怒られ、残業で夜中に帰るのは当たり前。
私も含めて、社員はみんな自分のことで精一杯。 社内の空気はかなり悪い。
こんな毎日はもう、うんざりだ。
(頭痛い…
休日が欲しい…
給料増やして…
なんで働いてるんだろう…)
溜息をつきながら感覚で家への道をふらふらと歩いていく。
眠気と明日への不安で疲労がどんどん増してくる。
本当はタクシーを呼びたいが、そんなお金はない。
タクシーを呼んでいたら、こうはならなかったのだろうか。
私は、目の前の信号が赤になったことに気が付かなかった。
突然聞こえたクラクションの音で我に返る。
右側からの光に気が付き見ると、すでに目の前にトラックが迫っていた。
(あ、死ぬな。)
直感でそう思った。
驚きはしたが、心のどこかは安堵した気がした。
反射で目を
全身に痛みが走る。
痛みと衝撃でそのまま倒れてしまう。
周りから人集まってきた。
何かを喋っているようだが、よく聞こえない。
話そうにも話せない。
体も思うように動かない。
突然、家族のことや学校でのことがフラッシュバックした。
(これが走馬灯か…私の人生も終わりなんだ。)
そういえば、入社してから忙しくてアニメを見たり、漫画を読んだりできなかったな。
…漫画?
そんなとき、ふと思い浮かんだ。
(ん?ブラック企業で働いていたら交通事故で死亡?
これはもしかして、漫画の世界でよくある…
異世界転生するやつなのでは?)
死にかけのタイミングで考えることではない気が…
(そして貴族とかに転生して、魔法が使えるようになって、イケメンと恋して、
今とは真逆の生活を送れるのでは?
社畜ロボット生活から卒業できるのでは?)
まさか、久しぶりに嬉しくなるのがトラックに
相当、今までの生活が辛かったのだろう。
段々と冷え始める体と薄まる意識とは対象に、私の脳内は
体調がいい時に学級閉鎖になったか、アイドルのライブで盛り上がるオタク
ぐらい盛り上がっている。
どうやら、無意識のうちに笑った上に
集まってきた人達は怯えたり、更に慌てたりしている。
(よっしゃ!!待ってろ異世界!!)
そんな、死ぬ間際とは思えないハイテンションの中、
夜空に輝く満月を見上げたのを最後に、完全に意識が途切れた。
________ ???
謎の場所にある豪邸で仕事がひと段落ついた男は椅子の背もたれに寄り掛かった。
《待ってろ異世界!!》
男は時空に歪みが発生したことを感じた。
「またか…忙しいんだけどな。
上から色々言われる前になんとかしたい所だけど…」
男は面倒くさそうに言うと、使いの者を呼び出す。
「お呼びでしょうか。」
「何者かがまた転生したらしい。
俺はしばらく忙しくて対処できなそうだから、それまで監視しておいて。」
「了解しました。」
使いの者はそう言うとテレポートしていった。
「予定があくといいけど。」
男はやれやれと言う感じで、また仕事へ戻って行った。
バッドエンドはふきとばせ!! 桜里ゆこ @ouzato
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