第2話

 今日は、とてもいい天気だった。

 朝六時三十分に目が覚めた。カーテンを開けると、雲ひとつない青空が広がっていた。

 朝食はトーストと目玉焼きとサラダだった。妹の美月は、昨日の宿題をやっていないことを母に叱られていた。

 私は、ふと違和感を覚えた。

 これは——昨日と同じだ。


 学校で、英語の小テストがあった。

 範囲は不規則動詞の活用。bring-brought-brought、think-thought-thought、buy-bought-bought。

 私は、問題用紙を見る前から、出題内容がわかった。

 昼休み、美優が話しかけてきた。

「ねえ、そら。佐藤くんって、どう思う?」

 私は、その質問が来ることを知っていた。

「……かっこいいんじゃない?」

「えっ、そう? そらがそう言うなんて珍しいね」

 美優は嬉しそうだった。

 私は、昨日の自分の返答を思い出した。「普通じゃない?」と答えたはずだ。だから今日は、違う答えを言ってみた。

 違う答えを言えた。

 つまり、これは単なるデジャヴではない。


 放課後、私はルナに質問した。

「ねえ、ルナ。今日って、何月何日?」

『五月十七日だよ』

「昨日は?」

『五月十六日』

「……そう」

 カレンダー上は、ちゃんと日付が進んでいる。

 でも、私の記憶では、今日の出来事はすべて「昨日」と同じだった。天気も、朝食も、小テストも、美優の質問も。

 そして——今日も、怪物は駅前の商店街に、午後五時四十二分に出現するのだろうか。


 出現した。

 同じ場所に、同じ時刻に、同じ怪物が。

 黒い霧のような体。赤い目が三つ。全長およそ四メートル。

 私は、昨日と同じように戦い、昨日と同じように勝った。

 戦闘時間、三分十七秒。被害、なし。

 夕食は、カレーライスだった。


 私は、記録をつけ始めた。

 ノートを一冊用意し、毎日の出来事を書き留めた。

 五月十七日。晴れ。英語の小テスト、満点。怪物出現、駅前商店街、十七時四十二分。

 翌朝、私はノートを確認した。

 記録は残っていた。

 つまり、私の記憶だけでなく、物理的な記録も、日をまたいで保持されている。

 しかし、周囲の人々は、昨日と同じ行動を繰り返している。

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