第2話真田兄弟戦死と内藤昌豊の死
戦は決しており、武田の部隊が撤退していく中昌景は逃げていく部隊の旗指物に目がいく。
その旗は六文銭、信濃先方衆で昌景と同じ第一陣であった真田兄弟の物であった。
真田信綱は青江貞次を獲物とする猛将であり、父親である幸綱の軍略を受け継ぐ名将であり弟昌輝も同じく兄に負けず劣らずの武者振りで武田に無くてはならない人物であった。
「其方等は真田隊の者だな、信綱殿や昌輝殿は無事なのか?」
昌景の問いに対して一人の兵士が前に出て目の前に差し出す。
「ここにおられます」
差し出されたのは血染めの陣羽織と信綱が愛用していた青江貞次であった。
「そうか、大義であった、誰か彼に馬に乗せてやってくれ」
昌景は全てを察し血染めの陣羽織を持った彼に貴重な馬を与えた。
「おぬしは必ず生きて帰らなくてはならんぞ。しっかりと主君に忠義果たせ」
「ははっ!!」
昌景の言葉に兵士は感じ、泣きながら馬に乗り、少ない兵達と共にかけていく。
「ワシも次期にそちらへゆく。それまでの短い別れだ」
わずかな手勢を率いて昌景はさらに駆けていく、その中で彼が見るのはおびただしい味方のしたいであった。
「(ここまでの負け戦は戸石城以来いやそれ以上であるやもしれん。ならばこそこれ以上の損害は出してはならん)」
この時、既に真田兄弟以外にも、土屋昌続や原盛胤など多くの主力武将が戦死しておりもはや壊滅にも等しい大損害を被っていた。
そうとは知らずに昌景はまだなお、逃げ延びていく味方がいないか探す中である、騎馬武者に出会う既に戦意がなく、鎧も銃弾の跡が何ヶ所かあり激戦を生き延びた者だとすぐにわかった。
「お主、どこの隊の者だ!」
呼び止められた武者はすぐさま下馬をし身を低くする。
「それがしは内藤様の兵でございます」
「内藤殿のか!」
昌景の言う内藤とは内藤昌豊または昌秀とも言い同じ武田重臣であり、武田信繁亡き今武田軍の副将格である。彼もまた真田兄弟の後詰で控えていたのだが先程の真田隊より後から騎馬武者が来たと言う事は真田隊と同じ場所で戦っていたことになる。
「して内藤殿は?」
予想はしつつも昌景は聞いてしまう。答えは武者の心痛な表情と涙でわかる。
昌景は唇をギュッと噛み、騎馬武者に礼だけ述べ少しこの場所に踏みとどまることにした。
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