(仮)純粋無垢な新米ハンターと古の精霊

シフルキー

第1歩 ~出逢い~

第1話 精霊の住処~出逢い~

――目の前に広がる水面は、ただの泉ではなかった。

水面を覗き込むと自身の姿が鏡のように映し出される。


先日この世界での成人を迎え、ハンターになったばかりの少女ソファは、肩にかかる程度の琥珀色ちゃいろの髪をかき上げ、数日前に泣き濡らした大きな瞳を周りに気付かれないようにこっそりチェックしていた。



大丈夫。もう腫れてないわね。――私は意を決して尋ねた。


「……ここが“精霊の住処”……?」


「違うわ」

隣のセレナが首を横に振りながら落ち着いた声を返してきた。

「ここはまだ“入り口”。奥へ進むには、導きを受けなければならないの」


――諭すような優しい声。

セレナはエルフ族のハンターで凄腕らしい…。

らしいって言うのは、私は最初彼女の事をギルドの酒場の看板娘だと思っていたから。

事情があってあまりギルドから出なかったみたいだけど、色々あってへ一緒に来てくれている。

翠色みどりいろの長髪をなびかせると、女の私でも時々ハッとさせられる。

それもそっか…ギルドに出入りするハンターたちは皆すれ違う度に振り返ってニヤニヤしてるもんなぁ。

特に勢いよく盛り上がる双丘と夢幻的な深い谷間…私も標準体型ふつうだとは思うけどあれは次元が違う。


彼女とは別に一緒にいるのは2人。

全員がA級ハンターの“スプライトクインテット”のリーダーノエルと、の軍人のピエール。


だったっていうのは、彼女が率いていた“スプライトクインテット”は解散しちゃったからだ。

クインテットの名が示す通り5人組だった彼女たちは、リーダーのノエル以外の4人がそれぞれ恋仲になって、この国で暮らすことになったらしい。


ノエルは…魅力的だと思う。

燃えるような赤髪をざっくりまとめ、切れ長の瞳。自信に満ち溢れた瞳はホント頼れるお姉さんって感じ。セレナは置いといて、引き締まった体なのに出る所は出てるし、おまけに長い脚…私も標準体型ふつうだとは思うけど…あれには勝てない。


もう1人のピエールは元敵国の軍人。

軍人っていうより、物語に出てくる王子様のほうがしっくりくる。

整った顔立ちに蜂蜜色きんいろの髪で祖国の方へ心配そうな眼差しを向けている。

――理由は知ってる。

先日彼の国がこの国へ攻めてきた。

簡単に言えば彼は指揮官に反旗を翻し、先陣として率いていた2000人の兵とともにこの国へ亡命して来たんだ。祖国へ新婚の奥さんを残したまま――。



私はを求めてに来た。


無力だった私。

守られるだけだった私。

大切なものを失った私。

泣くしかできなかった私。


そんな私をノエルが誘ってくれた。

この国で再結成する“スプライトクインテット”の仮メンバーとして。


私は強くなりたい。

最初は皆で笑って冒険がしたかった。

ただそれだけ。

現実は違った。

ハンターになって数日で現実を知った。

戦えなきゃ失う。

力がなきゃ失う。

守るためには力がいる。


私は、力が欲しい。



そんな私を見てノエルがにやりと笑い、水面へ軽く手をかざした。


「素通りはできないのよ。

 ここを開けられるのは、

 精霊に縁のある者だけ。

 心配することないわよ~。

 ここにんだから」


彼女の手から淡い光が広がり、水面がふるりと震えると瞬く間に波紋は輪を描き、光の縁が浮かび上がる――。


私はその光に目を奪われた。

同時に自分が呼ばれているような、不思議な感覚に包まれる。


ピエールが思わず前に出て、その光景を凝視した。

「……ここを通るのか……?」


セレナが微笑んで答える。

「そう。導きがあれば誰でも通れるわ。精霊に縁を持たない者が勝手に足を踏み入れれば――ここはただの泉よ。ずぶ濡れになるだけ」


「……なるほど、もう一度確認だが、通っていいのか?」

「しつこいなぁ。大丈夫だって!」

とノエル。


「行きましょう」

セレナが静かに告げ、一歩を踏み出す。


彼女の姿が光に包まれて溶けていくのを確認し、ピエールは意を決して足を進め、ノエルが固まったままの私の背を軽く押し、同じく私たちも光に包まれた。


――光の向こうは、異なる世界だった。


ひんやりとした冷気の中、天井や壁一面に散らばるのは、星屑を閉じ込めたかのような鉱石。

燐晶石りんしょうせきと呼ばれる光の結晶。


それが呼吸をするように明滅し、洞窟みたいな空間全体に輝きを放っている。


「……きれい……」


私は思わず息を呑み、足を止めた。

目の前の光景は夜空の星を閉じ込めたようで、目が離せなかった。


隣でピエールもまた、言葉を失っている。

「……ここが、精霊の……」


ノエルは大して驚いた様子もなく、口笛を吹くように軽く笑った。

「何度来ても派手だねぇ。ま、ここじゃ反応はそうなるよねぇ」


セレナも肩をすくめながら頷いている。


私とピエールが見とれていると、足元の水面がふわりと揺らめいた。

静かだった水辺が呼吸するように膨らみ、淡い光を抱えながらゆっくりと浮き上がってくる。水が重力を裏切り、柔らかな膜となって空間へ広がっていくように。


「……水が……浮いてる……?」

私は瞳を大きく見開き、無意識に後ずさった。


ピエールも剣の柄に手をかけ、息を呑む。

「ありえない……。これは――」


セレナが微笑みながら首を振る。

「驚くことじゃないわ。ここは“精霊”が支配する場所。この水は、精霊たちの目みたいなものね」


ノエルが肩を竦めて付け加える。

「要は“興味津々”ってこと。あっ!来た来た」





――――――――――――――――――




はじめまして。

これは“私の物語”


この世界について説明するね。

まず読み終わったら次に行く前に

💗を押してね。

物語から離れる前に

★を3回押してね。

フォローしてくれれば、

次の物語の通知が届きます。


皆に応援して貰えるように

私、強くなる。


次回 “精霊登場”



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