ニートから人生をやり直したら、隣にいたのは彼女たちだった

@naga51552

第1話 派遣切り

 派遣会社からの電話は、わずか十五秒で終わった。


「――悪いけど、今回で契約は終わりだ。寮も今週中に退去してくれ」


 通話が切れたあと、スマホの画面には自分の情けない顔が映っていた。


 俺――松野 裕也、30歳。

 特別なスキルもなく、器用に生きられるタイプでもなく、

 ただ“使い捨ての労働力として、日々をなんとか繋いできた。


 寮は安かった。だが、仕事がなくなった以上出ていかなければならない。


 追い打ちをかけるように、ニュースアプリが通知を落としてくる。


《新型感染症、全国で拡大。派遣企業、採用停止の動き――》


 ため息どころか、声も出なかった。


 次の仕事が決まらないのは、俺のせいじゃない――そう思いたい。

 でも、世の中のせいにしている場合じゃない。すぐにでも仕事を探さなければ生きていけない。



 寮を追い出された夜、荷物といえばリュック一つ。

 財布の中身は、ほんの数万円しか入ってない。これが今の全財産だ。


 季節は1月。春先に近づいて来たが、まだ夜はそれなりに冷え込む。

 すぐにでもこの寒さから逃れたかった。


 だから俺は、自然と足が向くままに歩き出した。

 唯一、知っている避難場所へ。

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