女魔王の腹心は苦労人です。(主に同僚が原因)

氷室颯

第1話 主君から招集されたけど、同僚の癖が強すぎて(いつも)死にそうです・・・。

はあ。今日は、いや今日もツイてないなぁ。

仕事に行った先で襲撃されるし、騙されそうになるし、何故か侮辱されるし、

「殺せえぇ!!」

こんな煩い奴等の相手をしてるし。

僕には君たちなんかに構ってる暇なんてないの。分かる?


「「人数で潰すぞぉぉ!」」

まあ、こんな事をこの馬鹿共に言っても無駄か。手早く終わらせよう。



・・・駄目だ。やっぱイラついてきた。



「女帝の幹部がビビってるの……」

「元素魔法:風雷一閃」

僕の呟きに呼応して、周りに幻想的な雷が駆け巡った。そのまま物理的な影響を及ぼしていく。魔法の一例だと思ってもれえれば、それで十分。


というか、人間って馬鹿が多いのかな?侮辱する気は無いけど、どうしても頭が足りない人が多すぎて困ってしまう。相手の力量すら測れないなんてね。





数十秒後。相手の拠点、すなわち城は更地になった。いつもの事だ。

後始末は後で部下に任せることにして、僕は魔法通話を繋いだ。


『レイヴ様、お待たせいたしました。今から帰還します』

美声が聞こえてきた。レイヴ様のモノだ。

『お疲れ様。急に悪いのだけれど会議を開きたいの。帰ってきてちょうだいな』

『了解致しました。その言葉だけで感無量です』

『うふふ、大袈裟すぎよ。それじゃあね』

ご機嫌が麗しくて何よりだ。そんな事を考えつつ、僕は転移魔法を発動させた。







自己紹介が遅れたね。僕はルーカス・ヴァイス。ヴァイスって呼ばれてる。

敬愛する女帝であるレイヴ様の部下であり、「四天」が一人。

魔族の階級は「悪魔公デミウルゴス」。まあ、実際は「原罪の七王ヴィテア」みたいなものだけどね。


因みに説明すると「」っていうのは、レイヴ様に仕える者たちの中でも、特に強いと言われる四人を指す。何故か分からないけど、一応僕もその一員なんんだ。

所謂「幹部」っていうヤツかな。



・・・僕以外は常識がない奴が集まっているけど。


僕は俗に、【光輝なる悪魔ヘイローデーモン】って呼ばれている。評判が良いのか悪いのか分からないけど、他の同僚三人よりは遙かにマシな通り名だと思うよ。多分ね。


レイヴ様についても少し説明しておこう。本名はレイヴ・ノクティス(様)。

彼女は僕たちの女王で、皆から慕われている。魔族の階級は、階級をつけるのもおこがましいくらいだけど「原罪の七王ヴィテア」だ。


俗に言う【夜界の女帝クイーンオブナイト】は彼女のことなんだよ。


美しく整えている長い黒髪に紅い眼。美しい顔だちであり、上品なデザインのドレスもレイヴ様の気品と優雅さを象徴している。

若い頃はもっと派手なデザインのドレスだし、もっと自由奔放だった・・・と侍従長から聞いている。それも気になるな。







・・・今、僕のことを人間だって思った?残念、不正解☆

僕たちは魔族、言い方を変えれば悪魔とかになるね。


人間と敵対する趣味はないんだけど、人間が僕たちを嫌っているからしょうがない。僕たちは自己防衛と勢力拡大を行っている、というわけ。

つまり!!僕たちは悪くないんですよ、ハイ。


・・・いや、僕は誰に弁明しているんだ?

僕は魔法発動のタイムラグを待ちながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。


やっぱり同僚達のせいでストレスが溜まっているのかもしれない。


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説明しよう。


この世界には不思議な力が宿っている。


魔法の行使はもちろん、自身の意思や欲望に準じた「能力スキル」を獲得できるのだ。いうならば「意志の結晶」といったものだ。自分の魂が強ければ強いほど、願いが強烈なほど強いスキルを獲得する。

えげつないエネルギーをその身に宿すので、強者しか獲得できないが・・・。



スキルも強さと格によってさらに分類できる。


一番弱いスキルは通称、「ノーマルスキル」と。

それの次に弱いが、そこそこ使えるスキルは「エクストラスキル」と。

種族によって生まれつき持っているスキルは「固有スキル」と。

本人の根源的な感情・特性・欲望に基づいたスキルは「ユニークスキル」と。

これが進化すると「究極能力アルティメットスキル」になる。


アルティメットスキルにもなると獲得できる者が限られてくる。ヴァイスやレイヴ、ヴァイスの同僚達は獲得しているが、普通はなかなか獲得できない。

才能と努力、強い意志がそろって初めてユニークレベルが獲得できるかどうか、というレベルなのだ。


また、魔族はその身に宿る膨大な量のエネルギーで、魔法を簡単に行使できる。

このエネルギーは、「エーテル」と呼ばれている。


空気中にも漂っているので、エーテルを体内に持たない人間も才能次第で魔法を行使することができる。空気中からかき集めればいいのだ。

効率は落ちるが、体内にエーテルがなくても魔法を行使できるのは魅力的だろう。


魔法とスキルは似て非なるものだが、習得できればある程度の精度で技を放てるのが魔法であり、獲得すれば簡単に力を行使できるのがスキルと表現できる。

システム化されているのがスキル、と言えば分かりやすいだろうか。


魔法にもいくつか種類がある。


聖職者が行使することが多い「神聖魔法」。

威力が強いが扱いが難しい「元素魔法」。

精霊の力を借りて行使する「精霊魔法」。

外敵や高エネルギー物質を封じ込める「結界魔法」。

元素魔法より自然に影響力がある「生命魔法」。

他者の心情を操り支配下におく「支配魔法」。


これらが一般的に知られている魔法である。


だが、魔族の場合はさらに種類が増える。


死霊や怨霊、魂を操る「死霊魔法」。

時間・空間に影響力を持つ「時空間魔法」。

ゼロから何かを生み出す「創造魔法」。

禁呪と言っても過言ではないほど危険な「暗黒魔法」。


これらを上手く運用するのが魔族の戦い方である。

生まれつき魔法への親和性が高い彼らは、相手の隙をつき、防御決壊を破壊しながら相手に魔法を叩き込むことを得意としている。


なので、強者同士の戦いは、武器・スキル・魔法を組み合わせて相手を圧倒することが大切となる。

また、魔族や一部の魔物・進化を遂げた人間は肉体を傷つけても死なない。魂だけで生きていけるのである。

これらを一般的に「」と呼ぶ。


精神生命体を殺すには、魂に直接攻撃するしかない。つまり生半可な戦力では餌にしかならないのだ。時間経過でエーテルを回復するので、実質ほぼ不死身である。

そんな彼らは「心核破壊コアブレイク」か「魔力消滅エネルギーロスト

でしか死ぬことなはい。


そんな精神生命体の代表格たる魔族にも、強さによって格付けがある。


一番弱く、人間でもある程度強ければ殺せる者を「下位悪魔レッサーデーモン」。

そこそこ強く、小規模の国家を壊滅できるのが「上位悪魔グレートデーモン」。

大国が全軍を投入してトントンなのが「暗黒貴族アビスロード」。

国家間をまたいで協力して勝負に持ち込めるのが「悪魔公デミウルゴス」。

一部の強者だけで挑まないと勝機が望めない者を、「原罪の七王ヴィテア」。


これだけでは実感がわかないと思うので、現代の武器が彼らを傷つけられると仮定して、どれで倒せるかを紹介する。


下位悪魔レッサーデーモンはナイフや拳銃(ピストル)で余裕だ。

上位悪魔グレートデーモン機関銃マシンガンを七丁、一斉にぶっ放すことで倒せる。

暗黒貴族アビスロードは毒ガスと戦車砲を惜しみなく投入すれば勝機はある。

悪魔公デミウルゴスはクラスター爆弾を絨毯爆撃方式で投入すればトントンだ。

原罪の七王ヴィテアは核爆弾と水素爆弾を同時投入で勝てるか否か、といった感じである。



暗黒貴族アビスロードから上の者達がどれだけ規格外かお分かりだろうか。



ここに書いた者達で一般的に知られているのは「上位悪魔グレートデーモン」まで。「暗黒貴族アビスロード」からは国家機密であり、「原罪の七王ヴィテア」に至っては伝説のようなものだ。実在を信じていない者のほうが多い。



ただし、全て実在する。



ヴァイスは「悪魔公デミウルゴス」、レイヴは「原罪の七王ヴィテア」であり、ヴァイスの同僚である他の3人も全員が「原罪の七王ヴィテア」だ。

ヴァイスは自分の意志で進化を拒んでいるため、実質的にレイヴ陣営の5人が

「原罪の七王ヴィテア」である。


残る二柱はどこにいるのか分からないが、同時に七柱までしか存在できないので、

一番弱いものが強制的に降格してしまう。

なので、ヴァイスは自発的に進化していないのだ。

エネルギー限度が低くなってしまうのが難点だが、レイと協力してエネルギーを借り受けているため、実質デメリットなしになっている。


因みに、人間たちと会う時にレイヴ陣営(レイヴを除く)は「上位悪魔グレートデーモン」と名乗っている。

本性を出しても良いことがないからだ。


なので、序盤でヴァイスに襲い掛かった者達は「上位悪魔グレートデーモンにならば勝てる実力者」だったのだ。

それに気付かなかったヴァイスは、彼らを愚かだと断罪したが・・・彼らは別に間違ったことをしていない。ヴァイスの隠蔽が上手くて騙されただけだった。








これは、と度重なる困難に見舞われて苦悩する、

一人の心優しい悪魔の物語である。


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転移魔法を使えば、一度登録しておいた場所に跳ぶ事ができる。

登録するための条件は、「一度訪れたことがある場所」だ。

僕は城内の謁見室、兼会議室の扉の前に設定してあるから、数コンマのずれがあるけど確実に着くんだ。

戦闘の時にはきちんと能力スキルを使って「空間操作」するけど。速い・確実・安全の三拍子がそろっているからさ。


深呼吸して扉を開けると、護衛の者達が大量に控えていた。ざっと500名かな?

こんなにいるってことは、大規模な会議があるのかぁ。

・・・僕も参加するべきなんだよね、多分。

とりあえずご挨拶が先だ。

「只今帰りました」

「お帰り。待ってたわよ」

レイヴ様、いつもより機嫌が良いんじゃないか?


「これだけの者を集めるのは久しぶりですよね。何かあるのですか?

「まあね。わたくしが皆と相談したいことがあるのよ」

本当に珍しいな。こんな大人数を集めるなんて。


「何か重大な事態でもあったのですか?」

「あの子たちは会議に参加しないわよ。いつもの五人で決めましょう」

いや、流石に多くないか?護衛の数。

こんないらないと思うんだけど。まあいいや。

「そうですか、分かり___ 」


開け放していた扉から、何か超高速の物体が飛んできた。

は? え、マジで何が飛んできたんだ??


「痛っ・・・。死ぬかと思ったぁ」


???


「お、帰っていたんだ。お仕事ご苦労様」

・・・ああ、レイか。いや、どういうこと!?


「吹っ飛んでいたけど大丈夫?」

「大丈夫なわけ無いじゃん。・・・あぁ、本ッ当に痛いよ」

とか言いながら、あっさりと立ち上がるレイ。全然痛がってなさそうだ。

吹き飛んできたハズなのに、髪の毛も乱れていない。







イーディス・レイ。彼女は四天の一人、【狡猾邪神ペルフィド・ルーラー】にして、僕の同僚である。魔族の階級は「原罪の七王ヴィテア」。


彼女は頭脳明晰で、戦闘もそつなくこなす。通り名が酷いけど、敵からはそう思われても仕方ないね。だって怖いし、変人だし、何考えているか分からないし。


味方からも恐れられているんだけど、本人は気にする素振りもない。

もう少し他人への関心を持ってほしいけど・・・。


因みにレイは、短く切った白髪に瑠璃色の目が映える美人だ。

身長は僕と同じくらい高いし、ショートカットのおかげで美丈夫に見えなくもない本人に言ったらキレられたけど。

端的に言えば、クールビューティーというやつだろうな。


いつも軍服を着ているけど、それすらオシャレに見えるんだ。黒い革手袋を愛用しているらしく、ほぼいつも着用している。


そんな彼女は____







「招集されたからここまで来たけどさぁ、殴られたらやる気なくなっちゃった。帰ろっかな」


サボろうとしていた。いや、働けよ。サボるなよ。

・・・やっぱり殴られてたんだ。犯人もだいたい推察できたぞ。


「いや、招集を無視するのはどうかと思うよ?というか、折角会議室に来たんだったら最後まで参加したほうが良いんじゃないのか?」

「分かってないね、ヴァイス。私は被害者なの。不運にも殴られてしまった、

花の様にか弱く可憐な乙女に、君は労働を強制するつもり?それでも男なの?」


え?これ、僕が怒られている流れ?ひどくない?


「いや、レイは弱くないよね。僕より強いじゃん」

「それは君が弱いからでしょう?」

笑顔でそんな酷いことを言わなくてもいいじゃないか・・・。


「まあ、頭が悪くはないし許容範囲だけど」

上から目線で褒められた。全く嬉しくない・・・はず。

いや、やっぱり嬉しいかも。


「何で笑顔になっているの?」

「いえ、何でも」

横目で睨まれた。切れ長の目が不審そうに細くなっている。


「まあいいよ、アイツに比べれば____ 」

僕たちの前に爆風が巻き起こった。








「レ~~~イ~~~!!!なぁ~んか今、失礼なコト言おうとしなかったぁ~!?」


うるせえぇぇぇぇ!!鼓膜が破れるっつーの!!

・・・いつものことながら大変なんだろうな、レイ。

こいつに殴られてピンピンしている君が怖いよ。



「言おうとしてないよ?」

「さっき変なこと言ってたよね!!聞こえたもん!!」

「忘れたなぁ~」


レイと喧嘩している可愛らしい幼女。そして、僕の鼓膜を破りかけた張本人。

彼女は僕たちの陣営で一番恐ろしい。

クソ、まだ耳がキーンってしてる。声だけでも破壊力が抜群じゃないか。







リルカ・ノヴァ。それが彼女の名前だ。四天の一人であり、【暴虐天使デストロイ】という通り名だ。当たり前のように「原罪の七王ヴィテア」である。 

だけど、僕は声を大にして言おう。


使


見た目は10歳くらいだろうか。ふわふわしているピンクの髪の毛、碧玉の目、ほわっとしている顔立ち。桜色の唇は、まるで人形のようだ。

ふっくらとした形のキュロットに可愛らしいシャツ。髪飾りまで緑色のかわいいデザインだ。中身を知らない奴なら、確実に騙される。

可憐で大人しい貴族の娘、と思う人もいるかもしれない。



だけど、僕は知っている。さっきレイが吹き飛んできた原因はこいつだ。

彼女の腕力は魔族で一番強い。本気で暴れだしたら手に負えないので、

味方からは【血荊の王女】、あるいはシンプルに【猛獣娘】と呼ばれている。



魔法は苦手でも、自身の異能力と腕力、魔力、武器を使えば敵なしなんだよな。

あとは戦略的に動けたら完璧なんだけど・・・無理だね、諦めよう。

数少ない戦闘特化型の女の子なんだ。働き方の多様性を認めてあげないとだね。


レイの方が名前は知られているが、僕はこいつの方が危険だと思う。

取引が通じないのだ。理由は簡単。取引に応じるほど気が長くない。短気。

さらに戦闘狂ときた。こんなに怖い存在、なかなか無いんじゃないかな?


レイはその点、話は通じるからね。言いくるめられるけど、まだ意思疎通ができるだけマシ、という感じなんだ。ハードルが低いのは認めるけど、リルカはマジで話が通じない。見た目と反して猛獣みたいで恐ろしくなる。

いや、可愛いけど、性格が可愛くないんだよな。


「あれ?ヴァイスじゃん!!おかえり!!」

クッ、可愛い・・・。騙されるな、僕・・・!


「ただいま・・・?というか、リルカは何でレイを殴ったんだ?」

「ムカついたから~!」

「ええ?理不尽・・・」

怒られないようにこそっと呟いたお陰で、リルカの耳には入らなかったようだ。

・・・良かったぁ。


「ねえ、何でヴァイスには怒らないの・・・?」

バッチリ聞いていたレイがツッこんできた。僕にも責任を負わせようとするなよ!

「ヴァイスはね、いつもアタシに優しいから!」

「それさぁ、私が性格悪い人みたいに聞こえるからやめてくれる?」

「悪いでしょ?」

リルカも大概だと思うぞ。というか、リルカは性格より頭が悪いんじゃあ・・・。









「我が君、ご命令に応じて馳せ参じましたァ!!!」

どいつもこいつも五月蠅いなぁ!もう少し静かに入って来いよ・・・。


「サイラス、五月蠅い。会議場に入るときに騒がないで」

レイからの手痛い批判を食らったサイラス。でも彼は笑っている。異常者だ。


「はぁ?さっきリルカと喧嘩してたお前に言われたくねぇよ」

ハイハイ、強気なカップルがここに爆誕ですね~。お似合いですぅ~。


・・・僕なんて全然モテないのに。


「おいヴァイス、手前さっき何考えていた?」

「ナニモカンガエテナイヨ」

「いや、棒読みだし」

サイラス、お前目が怖いぞ・・・。そんな殺意を持った目で僕を見ないで!

「別にいいけどな。お前だってリルカとよろしくやってるじゃねえか」

やってないッ!!!そして望んでないッ!!







彼の名前はサイラス・アーク。四天の一人にして【残酷な遊戯者ダークネス・プレイヤー】と呼ばれている。その通り名が指し示す通り、悪意の塊みたいなヤツだ。そして、当然「原罪の七王ヴィテア」である。


仕事は出来るし、交渉の達人みたいなタイプだけど、如何せん軽薄なイメージをぬぐえない。あと怖い。レイと似ているんだけど、顔は笑顔でも目が笑っていないんだよね。静かな威圧感を発散させてるようなイメージかな?


戦闘も得意、狡猾で相手に刃を向けられても笑っている。僕みたいな平和主義者からすればドン引きだ。


まあ、彼も一見普通の好青年だ。僕より身長が高いし、顔だちも整っている。眉目秀麗であり、黒色の蓬髪とオッドアイがムカつくほどお洒落だ。

服にもこだわっていて、藍色のシャツに赤色のタートルネック、黒のスキニージーンズ(?)を白い靴で引き立たせていて、隙のない印象を与える。

僕も見習いたいファッションセンスだ。







え?僕はどんな感じか、だって??



・・・黙秘。金髪とアイスブルーアイである、ということ以外は話したくないね。

僕の服の解説なんて需要がないからさ。



話を戻すけど、人間たちがイメージする魔族の性格に一番近いのはサイラスかも。

契約はしっかり守るけど、抜け道をすぐに見つける。簡単に相手を丸め込む。

戦闘狂な一面もある。


・・・あれぇ?性格、レイとそっくりだな??戦闘狂なのはリルカだけど。


「リルカとお似合いだなんてヴァイスが可哀想でしょ?」

「柔よく剛を制す、って諺があるじゃないか。つまり、我らが猛獣娘を光輝なる悪魔さんが制してくれるかも____ 」

サイラス、お前死んだな。リルカがえげつない目で見てる。

自分で自分の首を絞めるとは、まさに此の事だろう。


「はぁ!?アタシが猛獣?殺してほしいの!?いや、殺すよ!?」

ほらね。うん、僕は逃げようかなぁ・・・。


「ヴァ~イス君♡逃がすわけないでしょう?」

レイ、さっきから僕のことを巻き込むなよぉ!!

「いや、流石に僕は関係ないし・・・」

「ダーメ♪」

こいつ悪魔だ!!!


・・・うん、僕も悪魔だ。魔族だよね。悪口が通じないんだよね。

だって種族が魔族だもん。悲しい。


「アハハ、全員ぶっ殺すよ~!!」

リルカーーー!!頼むから僕を巻き込まないでぇーーー!!


ん?床がバキッっていった・・・?


え?バキ?


・・・・・・はぁぁぁぁぁ!!??


「ちょっと流石にヤバいって~。リルカが床破壊してるんだけど」

レイ、笑いながら言うことじゃない!!そして僕に責任を負わせようとするなよ!!

笑顔で言ってるけど、僕を巻き込もうとする魂胆が丸見えなんだよ!


「床、直さないとね」

!!!


「僕は関係ないから直さ____ 」

肩を掴まれた。そのままレイの顔が急接近する。

「手伝ってくれるよね?」



現状を確認しよう。レイの強烈な握力が、僕の肩を蹂躙している。

ハッキリ言って、めちゃくちゃ痛い。


「んん?何か文句でも?」

「ハイ、テツダイマス・・・」

「いや~優しいね、ヴァイスは」


優しいとかお前に言われても嬉しくねえよ!!

これは脅迫だ。僕は従わないとこのまま肩を破壊される、という信じがたい恐怖に屈してしまったのだ。


まあ「生存本能にに従って生きる」がモットーの僕からすれば、今回の事件は不可抗力というやつだ。甘んじて受け入れよう。




・・・何だい、その呆れるような眼は?別にいいじゃないか。




こうなったからには

「元素魔法:万物復元オムニア

僕の無詠唱魔法が、リルカの破壊の痕を消し去っていく。

数秒後、元通りの荘厳な床に戻った。

「やればできるじゃん」

「ゴメン、全く嬉しくないよ」

脅迫された後に褒められてもなぁ。下心しか感じられない。


一方サイラスの方は。

「ちょ、落ち着けよリルカ・・・って手前!武器はズルいぞ!?」

「ずるくないもん!!」

「こっちは素手なんだよ!!」

元気そうでなにより。


「おいヴァイス、手前見て見ぬふりすんなよ!!」


ちょっと何言ってるか分かりませんねぇ~、ハイ。

僕は自分の心の平穏を守る事を優先するから、君は一人で頑張れ☆


「あれ、サイラスのことを無視するんだ。最低だね」

レイ、君には言われたくない。というか何で紅茶を飲んでいるんだ??

どっから出てきたソレ!?


「レイは何で優雅にお茶を飲んでるんだよ。ぜひぜひ僕に対してもをもってほしいなぁ」

「思いやりを持って行動しているよ?だから、さっき優しくお願いしたんじゃん」

いや、あれは思いやりとは呼べない代物だった。脅迫された僕の恨みはしっかり残っている。


「流石に冗談は大概に____ 」

僕の言葉はレイヴ様に遮られた。


「そろそろいいかしら?本題に入りたいのだけれど」

あ、確かに。ここに呼ばれた理由って会議だし。

というか、今までの時間って無駄だったよな。

別に喋るために来たわけじゃない。だったらレイは欠席しているはずだ。

ということは・・・・・・・


「ちょっと困った事態が起きてしまったの。皆の知恵を貸してほしくて、今回招集をかけたのよ。そうでしょう、サイラス?」

「はい。調査を行う上でいくつか気になった点があったので、上奏させて頂きました。よろしいでしょうか?」

打って変わって真面目な顔つきのサイラス。この百面相が・・・。

「大事な話だったし、早く会議を始めましょう」


レイヴ様の鶴の一声で、その場は一斉に収まった。

「「「御意」」」

「分かったー!」

・・・リルカ、空気を読め。そして敬語を使え。

まあ、レイヴ様が気にしてらっしゃらないのなら大丈夫か。





こうして、僕たちの命運を左右することになる会議が幕を開けた。





























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女魔王の腹心は苦労人です。(主に同僚が原因) 氷室颯 @tensuradaisuki

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