お題13:面接官が開口一番、「まずは腕相撲で自己PRをお願いします」。

 俺の第一志望である会社の面接会場。しかし目の前にいるのは筋肉自慢と言わんばかりのタンクトップ男だった。


「まずは腕相撲で自己PRをお願いします。私の相手をしてください」

「え……?」


 昨日まで入念に準備してきた志望動機とか、今後の展望をしっかり話す気持ちだったのに。頭が真っ白になる。


「じゃあ、始めるよ」

「え、はい」


 わからないまま、手をがっちりとつかまれて立たされる。そしてリングへ。やべ、この人腕が俺の二倍ぐらい太い。絶望が凄い。


「さて、実は言うとね。わが社に受かる条件は……どんな状況においても全力を尽くせるかどうか、なんだ」

「な、なるほど……?」

「では、始めようか」


 言われた通り全力を尽くそうとしたけれど、開始数コンマ秒で倒された。そして結果は、まさかの採用。なんでだよ。


「私の指示通りに動き、意図を汲み取ってくれた。まずは上出来だよ」

「大丈夫かこの会社」


 第一志望にしたの、間違いだったかもしれない。

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