変身についての覚え書き

@hashito_

第1話

 私は毎朝、鏡の前で自分の顔を確認する習慣がある。

 別にナルシストというわけではない。ただの確認作業だ。目が二つあること。鼻が一つあること。口が一つあること。それらが昨日と同じ位置に、同じ形で存在していること。

 今朝も、すべて問題なかった。

 私の名前は月島あかね。十五歳。高校一年生。そして——魔法少女だ。


 魔法少女になったのは、中学二年の春だった。

 ある日、下校途中に不思議な生き物と出会った。白い毛並みの、猫とも兎ともつかない小動物。その生き物は私に言った。

『君を魔法少女にしてあげよう』

 私は特に深く考えず、承諾した。当時の私は、少し退屈していたのだと思う。

 生き物——ミルクと名付けた——は、私に小さなブローチをくれた。銀色の台座に、赤い宝石が嵌め込まれている。

『それを握って、「変身」と唱えるんだ』

 私は言われた通りにした。

 すると、体が光に包まれた。一瞬の浮遊感の後、私は真紅のドレスを身にまとっていた。手には細身のステッキ。頭にはティアラ。

『これで君は魔法少女だ。悪い怪物を倒して、街を守るんだよ』

 ミルクはそう言った。


 それから二年が経った。

 私はこれまでに、三十七体の「怪物」を倒した。怪物は月に一、二回の頻度で現れる。大きさも形も様々だが、共通しているのは、人間に害をなすということだ。

 戦闘は、常に同じ手順で行われる。

 まず、ミルクが怪物の出現を感知する。私はブローチを握り、「変身」と唱える。現場に急行し、怪物と戦う。ステッキから魔力を放出し、怪物を消滅させる。変身を解除し、日常に戻る。

 これを三十七回、繰り返してきた。

 何の問題もなく。


 問題に気づいたのは、つい先週のことだ。

 きっかけは、些細なことだった。

 夕食の席で、母が言った。

「あかね、最近また背が伸びたんじゃない?」

「そうかな」

「伸びたわよ。去年買ったワンピース、もう丈が短くなってるもの」

 私は自分の体を見下ろした。確かに、去年より少し背が高くなっている気がする。成長期だから、当然のことだ。

 しかし、その夜、私はふと疑問を覚えた。

 変身後の姿——魔法少女としての姿——は、成長しているのだろうか?

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