僕の高校には学年イチの王子様系女子が三人いるし、全員ハラペコだし、うちにご飯を食べに来るし

ヤマモトユウスケ

第1話 プロローグ


 僕のクラスには、学年で一番の王子様系女子がいる。


 なんて言うと、他の高校に進学した中学の友達は、したり顔で「ああ、流行りのヤツね」とか返してくる。あるいは「写真とかないの?」とか。

 でも、このセリフの要点は、王子様系女子という部分だけではない。


 学年で・・・――の部分にも注目して欲しいのだ。


 そう、学年で。つまり、他にもいる。

 一年生と三年生にも、学年で一番の王子様系女子が。

 学校中の女子の人気をかき集め、バレンタインには山のような量のチョコを受け取り、クリスマスには机から溢れ出さんばかりの量のプレゼントを贈られ、男子から嫉妬と羨望の眼差しを向けられながらも、そのカッコいい美少女っぷりから同時に熱い視線も向けられるという、稀有な存在が、この高校には三人もいる。


 ここまで伝えると、中学の友達は「写真ないの? 見たいんだけど」以外の語彙を失う。実のところ、写真はある。僕のスマホの中に、たくさん。

 あいつら・・・・、勝手に僕のスマホを覗き見ては、自分の自撮りを残していくという奇行を毎回・・のように行うのだ。


 けれど、その写真はとても、他人には見せられない。だって、撮影場所が僕の家なのだ。恋人でもない女性を何人も家に連れ込む男だとは思われたくないでしょ?

 ――そう。

 僕の高校には、学年で一番の王子様系女子が、三人いる。


「姫宮君。僕もう我慢できないよ……!」

「姫ちゃんさ。私をこんなに焦らして、どういうつもりだ? 怒らせたいのか?」

「姫先輩! 俺のこと、もっと女の子にしてください……!」


 そして、その三人ともが、僕の家で、僕に熱い視線を向けて――。


「姫宮君、僕お腹空いたよー、飢え死にしちゃうよー」

「姫ちゃん、糖分が切れそうなんだが。早くしてくれないと暴れるぞ」

「姫先輩、俺、もっと映え写真アップしてフォロワーにちやほやされたい!」


 ……。ちょっと訂正。

 三人ともが、僕の手料理・・・に熱い視線を向けていることは、誰にも言えない秘密なのである。


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