影を数える校舎

@Aoba1712

第1話 七つ目の影

 その校舎には、使われていないはずの教室があった。

 古賀蒼(こが・あおい)がその存在を知ったのは、中学二年の秋だった。

 放課後、部活の準備で教材室へ向かう途中、いつもは閉まっているはずの三階の廊下に、灯りがついているのを見つけたのだ。

「……あれ?」

 その廊下は、工事中という理由で立ち入り禁止になっている。

 黄色いテープも、張り紙も、確かに今朝はあった。

 なのに今は、何もない。

 代わりに、長く伸びる影が、床に七つ。

 蒼は思わず立ち止まった。

 影の数がおかしい。廊下に人影は六人分しか見えないのに、床には七つの影があった。

 しかも、その余分な影だけが、微妙に動いている。

 ——まるで、遅れてついてくるように。

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