来世でもあなたを見つける

ざき

来世で出会うために

 私には彼氏がいる。


「おかえり」


「ただいま」


 高校時代からの付き合いで同棲だってしてる。


 彼は忘れっぽくて、記念日を忘れることだってあったけど、愛を伝えてくれるし私は十分幸せだった。


「愛してるよ」


 私を受け入れてくれた


 君がいればいいって


 そう思ってた


 結婚の話なんかして浮かれちゃってた



 ある日の晩


「おそいなぁ……」


 いつもなら帰ってきてる時間


 少しソワソワしながら彼の帰りを待っていた。


 ---プルルル……

 一本の電話



 彼が交通事故にあったと


 まるで人形みたいに


 全身から力が抜けその場に座り込んでしまった。


「行かなきゃ……」


 具体的には覚えてないけど


 ただひたすらに彼の病院へと向かった



「彼さんがいるのは308です」


 部屋に入って一番に視界に入ってきたのは彼の顔


 きれいな顔つき


 私が惚れた時と全然変わってないのに


「ねぇ……ねぇってば……!」


 いくら呼び掛けても返事はない


 あの頃の温かい彼はいない


 なんでおいてったの……


 まだやることいっぱいあったよ……



 部屋に帰ってきて静かな空間にただ一人立ち尽くす


「さみしいよ……」


 また涙を流すが


 もう抱きしめて慰めてくれる人はいない



 

 遺品整理をし始めた


 彼の死を受け入れてしまいそうで嫌だったがこのまま立ち止まるわけにもいけなかった。


 彼にこれ以上心配はかけさせたくないしね!


「なつかしいな……」



 一つのスマホが出てきた


「何これ……」


 私が知らないスマホ


「パスワード……」


 ケースの裏に挟んであった


 彼らしいなと思いながらそのスマホのロックを解除した


「誰これ」


 画面には知らない女とのツーショットやメッセージの数々


「どういうこと……」


 前まで彼が使ってるスマホなのだろうと勝手にそう思っていた


「なんで……」


 ずっと。ずっと裏切られてた。


 ねぇ、愛してるって言ったのは…?

 2人で将来の話をしたのは…?


 笑顔だった彼も

 悲しんでいた彼も

 怒っていた彼も

 私以外のための表情だったみたい


「ねぇ…返してよ…」


 あなたと過ごした日々


 あなたにあげたプレゼント


 あの時の感情


 あなたに奪われたまんまの心


 戻れないのに、悔しいのに、悲しいのに、憎いのに、


 涙が頬をつたう


「会いたいよ」


 彼のスマホをポッケに入れ


 私は部屋を出た


 もうこの世にいないのなら


 もし「次」があるなら


 私は次に行きたい


 あの人にもう一度


 会いたい



 来世で出会うために





 …昨夜、ホームに女性が飛び込んだとの情報が……

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来世でもあなたを見つける ざき @zacky1771

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