逃避行
はべつも
第1話
「借金がいくつもあって、破産してチャラにするのがいい」
私の寝室の隙間から、父の声が漏れでて聞こえる。借金していることを偉そうに話す父と、ズレた返答をする母。父の笑い声に私はイラつきながら、布団を被って無理にでも眠ろうとする。
教室に先生が眠たげに入ってくる。
毎日顔を合わせる先生の今日の調子を読み取るのが、私の楽しみだ。先生を仕事としてやっていても、機嫌があって、人間味があるのだと安心する。いつものように気だるげな声を聞きながら、自分のプリントをしまう。きっと変わりのない日常が幸せなんて誰も考えてないだろうなんて考える。
「今日の部活、どの曲練習する?」
そう覗き込むように聞く友達の声に、現実に引き戻される。来月、発表がある曲の練習をする予定だ。
「前回練習した曲がいいと思うんだよね。
最後のところ、盛り上がって楽しいし。」
「それ分かる!テンション上がるよね。」
部活が楽しみで、その空間が好きだったんだろうと、今になれば思う。
逃避行 はべつも @habetsumosenri
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★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
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