第2話 初戦
光貴によりギルドの受付嬢であるメアリーさんを紹介された。
「冒険者登録ですね。まず、冒険者について説明しますと……」
冒険者とはクエストを受けてモンスターを討伐したり生産職方たちが求める素材を集めたりする仕事で、AからFまでのランクがあるとのこと。冒険者になるにあたって一つ流派を選ぶと。流派とはそれぞれの武器に合った戦い方の頂点に立った者たちが立ち上げたもので真統流、全混流、シメリア流の三つに分かれるそう。ちなみに刀を使うと言う光貴は全混流を選んでライセンスBまでたどり着いてると。
真統流──様々な流派を取り入れた末、一つの型に辿り着いた流派。
全混流──様々な型を取り入れた末、変幻自在の戦い方に辿り着いた流派。
シメリア流──大魔法使いが開いた魔法を探求する流派。
この中から一つを選び入門しなくてはならない。
「美冬、俺のおすすめは全混流だぞ? これはあまり型にとらわれないで自由な戦い方ができるんだ。美冬のメイン武器が剣ならなおのことな」
「うーん……」
確かに俺のメイン武器は剣にする予定だから光貴の言う通り自由な全混流が良いのかもしれない。しかし、一つの極致のたどり着いたと言う真統流も興味が引かれるし、シメリア流の魔法を使ってみたいという気持ちもある。俺は悩んだ末、これを選んだ。
「シメリア流で」
「まじかよ……魔法使い職目指すのかお前……」
「いや、魔法を使って見たくてさ、それに剣なら我流でもなんとかなるかもしれないだろ?」
「いやでもな、真統流と全混流の剣技にはシステムのアシストがかかって少しばかり重たい攻撃になるんだぞ?」
「そうなのか……うん、でもやっぱりシメリア流だな」
「お前がそれでいいならいいけど」
俺はメアリーさんにシメリア流で登録してもらった。冒険者登録はすぐに終わり俺は冒険者となった。この後は光貴に案内されて防具や武器を揃えた。武器や防具の代金は光貴が代替わりしてくれたので初心者にしては立派なものが揃った。そして今、俺はダンジョンにいる。ダンジョンに何しに来たかと言うと、俺が受けた初心者用のモンスター討伐クエストをクリアしに来たのだ。倒すモンスターはスライム。討伐数は三体以上。ほんとに初心者が受けるような雑魚狩りだ。
「ま、危なくなったら俺が助けるから、まずは美冬の好きに戦ってみ」
「はいよ」
俺は目の前にいる小さなスライムを見て剣を抜いた。スライムは体内にある核を破壊すれば倒せる。そう光貴に教えられた。俺はただ歩いて近づき、目に見えているスライムの核めがけて剣を差しこんだ。プツッ……。そんな音がして白いエフェクトと共にスライムは消滅した。俺はこの結果に疑問を抱いた。
「なあ、初心者のクエストと言っても簡単すぎじゃ?」
「いや、それだけ運営が安全マージンとってんだろ。むしろこのぐらいがちょうどいいと思うぞ。攻略組の連中に話を聞いたら、ボスモンスターはこんなものとは比べられないほど苦戦するってよ」
「へえ、攻略組にボスモンスターか」
「興味あるか?」
「ない。俺はのんびりレベル上げでもしてるよ」
「そう言うと思った」
俺はこのあと計百三十二体のスライムを地道に倒してレベル4まで上がった。ギルドに戻りクエスト達成報酬を貰う。
「アイテムストレージにスライムの核ってのがあるだろ? それも売れば?」
光貴がそう言うので溜めてあるスライムの核はすべて換金した。これからは光貴に買ってもらった防具と武器代も稼がなければならないのだ。俺は安全をとったうえでレベル上げとお金稼ぎに集中することにする。
「あっ、やっべ、俺このあと妹と映画見に行く約束あるから落ちるな」
「わかった。いろいろ教えてくれてサンキューな」
光貴は片手をあげながらログアウトしていった。俺はと言うと一人冒険者ギルドを出てこの町周辺で一番強いと言われるボスモンスターが出現するところに向かった。何をするかと言われれば簡単だ。倒すのだ。ははは、なにを言ってるかわからないって? 確かに今日このゲームを始めたばかりのビギナーである俺がボスモンスターをいきなり倒すと言われてもなにをバカなことを言っているんだコイツ。とかしか思わないだろう。ただ俺も無策でボスモンスターを倒すと言っているわけじゃない。それにこのゲームに登場するボスモンスターの強さがどれぐらいなのか少し興味があったのだ。さっきは光貴に興味がないと答えたが、ちょっとだけ攻略組についても興味がある。攻略組に参加するつもりはないが、攻略組のトッププレイヤー達の実力が知りたいのだ。まあ、こんな初心者が攻略組の人に声をかけても軽くあしらわれるだろうから、興味の範囲で我慢しておく。
「さて、この近くのボスモンスターの名前はリ・リザードか……」
倒しても二度復活すると言われているボスモンスターだ。さっきギルドのメアリーさんに頼んでこの町周辺のマップとモンスターの資料を買わせてもらった。初心者が危ない真似をしないのかと心配そうに俺を見ていたのを思い出す。その心配は敵中なので心の中でごめんなさいメアリーさんと謝って置く。
「この世界でどこまで通用するか楽しみだ」
俺は期待と共に街を出た。
ソウルワールド・オンライン 和雨 @fujiriu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ソウルワールド・オンラインの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます