風の配達人リオ

ヨモギ丸

第1話 俺はリオ!

自然豊かなグリコ大陸は周りの海域の影響で、外の世界の影響を受けずに独自に文明が発展した大陸である。また、その影響もあってか、生物の進化も特殊で、木ほど大きな鳥も、大空を飛ぶ魚も、そして、それらを操る人間が暮らしていた。


これは、そんな大陸を飛び回る一人の少年の物語である。

「そろそろ帰るか、ヒッポ。」

「きゅいーー!!」


高度450m付近。大きな鳥の背に乗る少年。頭にはゴーグルをつけ、胸には手紙をくわえたヒノメドリの刺繍がされた服を着ている。


プルルルル


彼の電話が鳴る。


「やっべ、カルラからだ。」

『もしもし、いま、どこよ!?』

「空の上。」

『そんなことわかってるわよ!どこの上空飛んでるのって聞いてんのよ!』

「ヒッポ、わかるか。」

「きゅいー…」

「わかんね。」

『あんたってやつは…まあいいわ。仕事の依頼よ。速達でね。』

「それならお安い御用だ。いくぞヒッポ」

「きゅいー!!」


少年は飛ばされないようヒッポという大きなヒノメドリの背の毛を掴む。

ヒッポは全速力で太陽のある方へと飛んでいく。

「よーし、おーい、カルラどこだー?」

「やっと来たわね。はい、今回の依頼。」


大きな木の幹にある、配達業者「ニュース」の事務所。その中には、少年の幼馴染であり、そしてグリコ大陸西支部の支部長を務める少女カルラがいる。

カルラは眼鏡の位置を調整しながら、紙を少年に手渡す。


「これ、北の奴らの範囲じゃね?」

「微妙にこっちに入ってるのよ。」

「これくらいやってくれてもいいのに…。なぁ、ヒッポ。」

「きゅいー。」

「ごちゃごちゃ言わない、結局上の命令には逆らえないのよ。」

「わかってるって。そしたら行ってくるぜ。速達でな。」


少年はヒッポの背中に飛び乗り、合図とともに大空へと飛んでいく。


「いってらっしゃーい!」


カルラは声が届かないことはわかっていても、見送る時は毎回こうして声をかける。彼女なりの配達人への思いやりという奴だ。

「よし、ありがとな、リー爺さん。」

「今回のは最高の出来さ。落とさず届けてくれよ?」

「俺がこれまでに一度でも品物を落としたことがあったっけ?」

「そういや、意外にもないんだったな。」

「意外とはなんだ意外とは!」

「あはは、早く行ってくれよ、速達なんだろ?」

「もぉ…行ってくるからな!」


少年は、若くして西支部の筆頭配達人になったため、こうして時々住民からいじられることがある。


「ひどいよなぁ、俺は一度だって仕事でやらかしたことなんてないんだぜ?」

「きゅいー。」

「俺をわかってくれるのは、お前だけだよ、ヒッポ~。」

「きゅいー!」


すると、後ろから突然手のようなものが伸びてくる。


「うおっ、今日も来たな。」

「ぐへへ、その品物置いていきな。」

「荷物狩り…!」


少年はヒッポを操縦し、後ろからの攻撃を巧みに避ける。


「くっ、ちょこまかと…!これでもくらえ!!」


荷物狩りは箱のようなものを投げつける。すると、それは空中で爆発し、そこは粉まみれになった。


「くそっ、前が見えねぇ!」

「きゅい!」

「ぐへへ、これで終わりだ!って、俺も前が見えねぇ!」

「馬鹿かお前!」

「頭が良けりゃ、こんなことしてねぇよ!」

「お、そりゃそうか。」

「「あはははは」」

「って何笑ってんだお前!」


そんなこんなで、粉が晴れるとなぜか、少年と荷物狩りは位置が入れ替わっていた。


「は!?」

「へっ、チャーンッス!!だったらこいつごと貰ってくぜ!」

「…それはどうかな!ヒッポ!」

「きゅいっ!」


ヒッポは空中で突然制止する。コツを知らない荷物狩りは飛ばされそうになり、必死にヒッポの毛を掴んだが…自身の体重に負け落ちて行ってしまった。


「ほいっと。」


少年は入れ替わっていた鳥から降りてヒッポに乗る。鳥は主人を助けに行った。


「あれでも、鳥には好かれんだな。」

「きゅいー」

「だな、急ぐか。」


ヒッポは全速力で飛んでいく、それでも少年は落ちることはなかった。

「すいませーん!お届け物でーす!」


少年がドアを叩くと、中から大男が出てきた。


「えっと、リー爺さんが最高の出来だって言ってました。」

「そりゃ、期待できそうだ。」

「そしたら、サインお願いします。」

「あいよ、そういやあんた見ない顔だな?新人か?」

「ここ、普段は北の奴の範囲なんで、知らなくて当然ですよ。

 俺はリオ、ニュース西支部の筆頭配達人、リオです!」


リオとヒッポはこれからも、風に乗って荷物を届けに行くのです。

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風の配達人リオ ヨモギ丸 @yomogu_bekarazu

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