第4話 天才侍郎の第一印象最悪でした
(今日は噂の李官吏の仕事ぶりを、ちょっとだけ盗み見して……
それから帳簿の整理。
あ、そうだ! 陳上官から頼まれていた、濡れた帳簿の清書もあるんだった!)
鼻歌まじりに出勤した小葉は、書庫に入るなり掃除と棚の整理を始めた。
ギィ……。
扉が開き、背の高い男がすっと姿を現す。
「桜花宮の十年分の帳簿を、すぐに出せるかい?」
振り返った小葉は明るく答えた。
「桜花宮なら、各年ごとに桃色の印をつけてありますので、どうぞお持ちください」
「……へぇ」
男は棚に近づき、指先で背表紙をなぞる。
「最近、帳簿が探しやすいと聞いた。整理しているのは——お嬢さんかい?」
「はい! 王小葉と申します」
名乗ると、男の口元がわずかに上がった。
「今年の探花様だね。聞いているよ。
主上の改革で……唯一成功した“例”の官吏様だってね」
柔らかいのに、じわりと刺さる皮肉。
普段は嫌味に強い小葉でさえ、眉がぴくりと動いた。
(……なに、この人。感じ悪っ。
皇帝のことならいくらでも馬鹿にしていいけど……
私まで一括りにするのは違うでしょっ!!)
むっとした小葉の表情に、男は楽しげに目を細める。
「私は衛青。
……噂の探花様に会えて光栄だよ。では、また」
軽く手を振り、帳簿を抱えて満足げに去っていった。
扉が閉まった瞬間、小葉はどっと息を吐く。
(……うわっ、性格悪い!
でも……衛青って、もしかしなくても“衛侍郎”だよね?
天才で有名な……あの衛青……
うわぁ……第一印象、最悪……)
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