コネコネハウス

なかむら恵美

第1話

同じような造りの住宅街。

ごくごくフツーの住宅街に、1軒だけ立派な家がある。

「お茶でも、いがか?」

偶々である。通り掛けたら奥さんに、声を掛けられたのだ。

同じ列に住んでいるけど、特に付き合いはない。

折角だからと、言葉に甘える。呼ばれ入って、ビックリした。


壁はオール漆喰だ。家具もセンスが、非情にいい。

建材の1つ、1つが適所適材に使われており、収納場所も沢山ある。

建具も立派で、眩暈がする。庭も清々しい。

子供がいないと=たんまり貯金が、出来るのだろうか?

そんなはずはない。ご主人の勤め先は、どこかの孫請けらしいし、奥さんも

専業主婦のはずである。

自慢じゃないがウチの夫の勤め先は、超有名企業だ。口に出しは言えないが、

この一帯で一番、稼いでくるのではなかろうか?ボーナスだって桁違い。

にも拘らず、何なんだ。

「凄いですねぇ、綺麗だし」

ざっと見廻し、大袈裟に褒める。

出してくれたコーヒーはインスタントで、お茶請けは平凡だ。

「そう?でもね、実は」

「実は?」

自然と、前のめりになる。話のネタにもなりそうだ。

「身内がみんなしてくれて」

奥さんはコーヒーをゆっくり飲んでから、打ち明けた。


旦那の兄が設計士で、左官業の資格もある。弟は庭師。

奥さんのお姉さんは元・カーテン会社に勤めており、その夫の勤め先は、大手家具メーカーである。

旦那と奥さんの父親は、共に同じ不動産会社だったそうだ。

「そんなんで、色々してくれて」

聞きながら、我が家を思う。

夫の会社はオモチャメーカーだし、娘は時計会社。

息子は理髪店に勤め、親戚らしい親戚もいない。旦那もわたし一人っ子で、共に早くに両親を亡くした。

「へぇ。普段から交流とかしてるの?」

「まぁ、遠くない所に住んでいるから」

きっと、この家の経費。諸々に掛かって来たのも「身内割引」。

2割、3割、当たり前。

(コネコネハウス)瞬時に通称が湧いてきた。


                         <了>

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