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様相論理。解説がやたら難しく、実際に何を言いたいかが分からない論理形式である。

ただ個人的な解釈を言うならば、階層のレベルが上がる事により多くの人が納得出来る説明、論理になるという事である。

因みに様相論理の最大は『S5』。ここまで来ると、過程と結果が完全なイコールで結ばれる。

その世界に恋焦がれて生きているのだが、冷静に考えれば普通に日常でも転がっているのだと思い知らされる。


「様相論理、皆、知らないんだよね」

俺の同居人である鏡花は、小説家においては俺と同じ三流。しかし論理と哲学に置いては、人類の叡智の結晶であるAIをも手を焼く輩である。つまりAIに『天才に近い』と定義される程に、頭が回る。ちなみにこれは『AIが言葉として出力した事実』である。

そんな彼奴だからこそ、興味を持った難解な話などがたまにポロリと溢れ落ちる。

「知るわけねぇだろ。俺だって調べた上で、パソコンや哲学、言語の専門家が意識する話だと知った。精々逸般人は持っと目に見える形、本能に忠実なものを求める」

ラノベで女性の素肌を露出したものが『可愛い』と定義される様に。心理面が疎かにされる様に。別に露出したければすれば良いと思うのだが、其れが全てと決められると複雑である。

すると鏡花は目をぱちくりさせて、すっと此方の方を指さした。目が獰猛になる。つまりゾーンに入ったのだ。こうなるとやや厄介なので、少し警戒する。

「其れ、様相論理のS5。私の中でさ、様相論理のS5って、多分世界に溢れてるんだよ。

例えば数学の式。左辺と右辺、つまりイコールの前と後は必ず等しい。この時点で様相論理のS5は完成している。

例えば物質。どれだけ姿を変えようとも、過程から得られた結果はかならず等しい。

問題は其れが事実から離れて、人の目に入った時。解釈が加わった時、S5から陥落する。つまり真実になった時、どう頑張っても完全な世界で無くなってしまう」

ゾーン入りしたので話は難解だが、要約し、言葉を変えよう。万人が納得する様に。

「事実は誰が見ても覆らない完全な世界。しかし人の解釈が加わると、人の感情や価値観によって、答えが無数に出来る。そう言いたいのか?」

「そだよぉ。話が早ーい」

なるほどな。女性の露出したイラストが書かれていた。これが様相論理のS5。しかし其れを『可愛い』やら『気持ち悪い』やら『女性軽視』などと言うのは完全では無いという事か。

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