戦いの後には

朝野五次

第1話

果てのないほど広がってゆく突き抜けた青空と

すすけたような緑の草原が地平に広がっていた

そこを生きるものの喉を目を皮膚を焼き尽して止まない光が

地上へまっすぐに降り注いでいる


陽気な歌の数々が人々の輪の中心からあふれ出ている

素朴な木簡楽器の音が熱い空気をくすぐるかと思えば

そのリズムに合わせて踊る足音と笑い声が軽快にこぼれてゆく

その中心には一組の男女が同じ緑の衣装を着て

交換しあったばかりのネックレスの束を胸に揺らし笑いあっている

そこには悲しい顔のひとつとない人の輪があった


「魔法使いが戻って来たぞー!」


見張り小屋からの大声が響くと

輪に更なる歓声があがった


座っていた者は次々に立ち上がり

気の早い者は既にその方向へ向けて走り出していた

まだ遠くにしか見えない男は右足を引きずりながら

ゆっくりこちらへ歩いてくる


「やっと、やっと帰って来た」


少女の声は震えていた

上気した頬

見開かれた目からこぼれ落ちた涙が頬を伝った瞬間

小さなリスが空中から現れ

濡れたような瞳でその涙を見つめながら

ふさふさと尻尾を揺らし

見えない円柱をするすると駆け巡っていった


周りを見渡すと

さっきまでいじけたような緑色と白茶色の砂だった場所は

今はまるで嵐のような色彩で満ち溢れていた


瞬く間に伸びては咲き誇る赤や橙の花たちの周りに

優雅に極彩に羽ばたく蝶の群れ

人々の頭上すれすれを

金や銀色に光りながら飛ぶ魚があるかと思えば

白く大きな腹を見せてゆったり飛行するクジラもあった


それらが全て竜巻のように一点へ吸い寄せられ

するするという音に集約した

そこからぽーんとひと際大きな音がして

野百合の形をした花火が空へ形を一瞬残した


その花がはらはらと散り始めると

欠片が白い花びらと化して

歓声にわく人々の真上から

優しく緩やかに降り注いだ


そして肌の浅黒い者も色素の薄い者も

顔に傷のある者も腕や足を失った者も同じに

魔法使いと呼ばれる者の帰還を喜んだ









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