第2話 Q.これからどうする?

 ……これからどうすればいいのかな。

 ログアウトできないってやばくない?

 私は別に、デスゲームをしにきた訳じゃないのよ。

 だから、今からすることは明確!

 誰でもいいからチュートリアルまたはログアウトの仕方を聞く、それだけ。

 つまり、なんか目の前にあるこのお店の中に人がいればいいなー、と。

 ガチャ。

「わっぴゃあーー⁉︎」

「……いらっしゃいませー」

 まさか人がいるとは思わなかった。

 店内は外の廃れた雰囲気とは裏腹に、案外しっかりとしていた。

 床はピッカピカ。棚には謎の液体の入った瓶や、謎の言葉が書かれている紙あり、どちらも綺麗に整頓させられている。

 そして、カウンターの奥には、白髪のオッドアイ少年が一人。

 ーーって、

「オッドアイくん。……店主にしては若くない?」

「第一声がそれですか」

「違うよ、オッドアイくん。私の第一声は「わっぴゃあーー⁉︎」だよ。えへん」

「胸を張ることじゃないです」

 白髪の少年・オッドアイくん(勝手に命名)は、手に持っていた水晶を拭きながら私と話す。

 それから、呆れてた。「何この人、変な人だな」と言うように。

「何この人、変な人だな」

「言っちゃったよ! この子!」

 思わず声を張り上げる。こんなに声を出したのは……さっきぶりだった。

 それにしても、なんでそんなこと言うかな〜

 あ、私が変な人だからか。

 私がそんな、どうでもいい思考を巡らせている最中も、オッドアイくんは水晶を磨いていた。

 しかし、磨き終わったのか水晶をカウンターに置き、にこやかな顔になる。

「それより、買っていきますか? あなたにものを買えるお金があるようには見えませんが」

 ……にこやかな表情なのに、けっこう毒舌だった。

 これが営業スマイルというものか。目だけが笑っていなかった。

「ん〜、せっかくだしなんか買うかな〜」

「ちなみに、いくら持ってます?」

 確かに、私ってお金いくら持ってんだろ。

 端末に確認するとかあったかな……

 あ、【ステータス】で見れそう。

 えーっと、表記はゲームでお馴染み「G」なのね。

 で、所持金……5000ゴールド、とな。

 多いのか少ないのかわかんないや。

「5000ゴールドですかー。それじゃあんまり買えないですね。」

 オッドアイくんが、私の端末に顔を近づけ、覗き込んでくる。

 NPCでもプレイヤーの端末って見れるんだ。戦えないから、見たところで影響ない。だから禁止されてないって感じなのかな。

「えー、買えない? 例えば……

 情報、とか?」

 オッドアイ君は少し驚いた表情をする。

 すぐに元の表情に戻ってしまったが。

「……まさか情報を買おうとするとは思いませんでした。……いいですよ。どんなのが要ります?」

「んー、まずこれらは無料でお願いしたいんだけど……この情報を買うのにかかる値段は?」

 オッドアイ君が先ほどよりさらに驚いた顔をする。

 そんなに驚くことかな。

「……情報によりますが……5000ゴールド以内でどうでしょう?」

「おっけー。なら、基本的なこのゲームの知識をお願いできるかな?」

「わかりました。基本の知識ですね?」

 オッドアイ君は、目の前に置かれていた水晶を完全にどけ、真剣に話し始める。

 やっぱり、商売をやってるだけあって売買には真剣になるのかな。

「まず、この世界は『壊滅ゲーム』です。

 本来のゲーム世界とは別の。

 個人に設定された特定の行動をすることで、この裏世界に入ることができます」

 ほーほーなるほど?

 オッドアイ君はそのまま話を続ける。

「それと、【臨戦体制】って知ってます?」

「まー、名称だけはね?」

「なら、それの説明もしましょうか。

 ……【臨戦体制】とは、文字通り戦うための端末モードです。

 ここではスペルを使い、攻撃をすることができます。

 現在の体力・状態などもここで確認可能。

 それとまあ、一つだけ注意点があるんですが……

 ……ここで終了です。区切り悪いですが」

 いきなり、オッドアイ君が話の途中で口を閉じる。

「そこまで行ったら注意点まで話してよ〜」

「今回の情報量は3000ゴールドです。続きは特別に2000ゴールドで教えてあげますよ?」

 うん。わかった。

 良くも悪くもこの子商売人だ。できるだけ私からお金巻き上げようとしてる。

 ……なんか言い方悪くなっちゃった。

 まー、流石に全財産はたきたくはないから……

「ありがとね〜 欲を言えばもうちょっと情報欲しかったけど。

 それじゃ、とりあえずここら辺をぶらぶらしてみるよ〜」

「本音ダダ漏れです」

 チャリンチャリン、とベルを鳴らしながら扉が開く。

 青く明るかった空は一変。少しの朱色を残し、夜色に染められていた。

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ログインしたら、街でも戦闘勃発中⁉︎ 橘 織葉 @To1123

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