プロローグ後編 追放の魔法少女

 私は、魔法使いが集う街、〈アチャバリ〉に出向いていた。

 

 この街は、魔族を通さない強力な結界が張られている。


 そんな街で、私は杖のお手入れをしている。

 最近魔族と戦うことも多くなっているので、特に手入れはしっかりとする。


 そんな時、私はこの街にある魔法学校の前を歩いていた。

 この街には、美味しいご飯も多く、常連のご飯屋さんに向かっていた。

 

「あなたはこの学校を退学処分としています」


「そ、そんなの許せない、学長と話をさせてください」


「もう処分は決まってます」


 魔法学校の前から、先生に見える大人の女性と、銀髪の少女が言い合っている。


 しかし、何か様子がおかしい。


 ――あの少女の魔力、凄まじい


 私も熟練の魔法使い。

 魔法使い同士、その人が使える、魔力の量や強さは、見るだけで感じ取れる。

 恐らく、あの先生にも伝わっているはず……。

 その少女は、明らかに大人の魔法使いの魔力はとっくに超えている。


 ――何か問題児なのか?


 その少女は、先生との言い合いをやめ、その場を離れた。

 私は気になったので、その子に話しかけることとした。


「ちょっといいかい?」


「はい? 何ですか?? エルフのお姉さん?」


 その少女に近づくとあらためてわかる。

 洗練された魔力が伝わってくる。


 ――この子はただの魔法使いではない


 どの職業も人手不足である。

 こんな逸材を何故、退学処分にしたのか。


「あなた、なぜ魔法学校を退学になったの?」


 私は次の日に帰るため、簡潔に質問をした。


 少女はしばらく沈黙した。

 しかし、しばらくすると大きなため息を吐いた後に、話し出した。


「お姉さん、すごい魔力だね。私の両親よりも多いかも」


「両親??」


「そう、私の両親はね……魔族に操られちゃったの。それが原因で、人を殺してしまった。その事件がきっかけで両親は捕まってしまった。私もそれに伴って退学処分ってわけ」


 理由はわかったが、疑問点が多い。


 ――魔物に操られてしまったなら、両親に責任はないのではないか


 私はそれが疑問で、その子にそのことを質問した。


「私の家はね、魔法都市の中でも名家出身なの。名家出身の両親が操られてしまったのは、かなりの大問題。家族はみんな追放されてしまった。名家の掟で、どんなことがあっても人を殺したら、捕まるっていうものもあるの」


 そして、学校も厄介者を置いときたくなく、この少女を退学処分にした。

 つまり、この子の両親は牢獄であり、帰れる家がないようだ。


 ――あまりにも不憫である


「少女、あなたはこれからどうするつもりだい?」


「私を追放した名家を見返してやるつもりだよ」


 ――こんな酷い目にあっていても、絶望はしていない


 こんなに秘めたる力を持つ少女を見捨てるわけにはいかない。

 この子をそのままにしていたら、何か悪い力に利用されてしまう気がした。


「少女、よければ私の元で修行をしないか?」


「修行??」


 私は、この少女の面倒を見ることにした。

 

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