エピローグ「新たな伝説の序章」
邪神との戦いから、一年が過ぎた。
世界は復興を遂げ、人々は平和な日常を取り戻していた。「黎明の翼」の名は、大陸中に知れ渡りもはや辺境の新興ギルドなどと呼ぶ者はいなかった。彼らは、世界を救った英雄として誰もが認める大陸最強のギルドへと成長したのだ。
その日、レオンは一人リンドールの街を見下ろす丘の上に立っていた。彼の隣には、一基の新しい石碑が建てられている。そこには、こう刻まれてあった。
『悲劇の王、ガルザードここに眠る。願わくは、その魂に安らかならんことを』
邪神の呪縛から解放されたガルザードの魂は、レオンの聖なる力によって浄化されこの地に祀られた。レオンは、定期的にここを訪れ彼が好きだったという白い花を供えている。
「ガルザードさん。あなたの望んだ、人間と魔族が手を取り合う世界にはまだ少し時間がかかりそうです。でも、僕たち、諦めませんから」
レオンが静かに語りかけると、まるでそれに答えるかのように優しい風が丘を吹き抜けていった。
彼の【神眼】は、未来を見通す。その瞳には、これから先もこの世界に様々な困難が待ち受けていることが映っていた。まだ見ぬ強大な魔物、古代遺跡に眠る危険な罠、そして人々の心が生み出す新たな争いの火種。
だが、不思議と不安はなかった。今の彼には、共に未来を切り開いてくれる最高の仲間たちがいる。
「レオン、こんなところにいたのね」
背後から、聞き慣れた声がした。振り返ると、リナが微笑んで立っていた。その後ろには、カイトやブロック、そしてギルドの仲間たちの顔も見える。
「皆、どうしてここに?」
「どうして、じゃないわよ。あなたを迎えに来たのよ、ギルドマスター。みんな、あなたを待ってるんだから」
リナが、レオンに手を差し伸べる。その手は、一年前よりも少しだけたくましくなったように見えた。
「さあ、帰りましょう。私たちの家に」
レオンは、その手を強く握り返した。
「ええ。帰りましょう」
丘を下り、仲間たちとギルドハウスへと向かう。夕日が、彼らの影を長く伸ばしていた。
「そういえばレオン、王都からまた手紙が来てたわよ。『ぜひ、我が国の宰相に』ですって。どうするの?」
リナが、いたずらっぽく笑う。
「もちろん、お断りです。僕の居場所は、ここだけですから」
レオンは、きっぱりとそう言った。
彼の人生は、理不尽な追放から始まったかもしれない。だが、その絶望があったからこそ彼は本当の力に目覚め、かけがえのない仲間たちと出会い自分の本当の居場所を見つけることができた。
物語は、まだ始まったばかり。
これは、役立たずと蔑まれた一人の神官が、世界を救う真の英雄となり最高の仲間たちと共に、多くの伝説を打ち立てていく壮大な物語の、ほんの序章に過ぎない。
「黎明の翼」が羽ばたく空は、どこまでも広くどこまでも続いていく。彼らの行く先には、きっと誰も見たことのない輝かしい未来が待っているだろう。
【鑑定】は役立たずと勇者に追放されたが、実は万物を見通す【神眼】だった。最高の仲間と最強ギルドを創り、世界を救います 藤宮かすみ @hujimiya_kasumi
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