蒼き航路

@Suchender3

第序話 宛先も無く空に落つ

最期に覚えたのは、飴玉の味。

最初に覚えたのは、沈む感覚。

耳障りな風切音と言葉にできない落ちていく感覚、周りには蒼い空の色ばかりが広がり、体感で二時間は落ち続けているというのに地上は見えない。

噂の転生モノってやつなのかとも考えたけど、転生モノならまずは女神の神殿じゃないのか?なんて考えている内に、ようやく何か人工物が見えた。

蒼空を見過ぎたためか、宙に浮いているように見えるどっかの軍隊の真っ白な空母の甲板が僕の真下に見え、一先ずどうやって着陸しようかと考える。

幾重にも考えている内にどんどん距離は縮まり、わずかながらに死ぬ可能性が脳裏に次々と浮かんでしまう。

こんなハチャメチャで理由の分からない状況が現実なわけない、だなんてこじつけは諦めるべきだと脳裏が告げている。

要は、このままでは確実に死ぬ。

空母の人に助けを求めるにも速度的に間に合わない、どんな着陸姿勢をとったところで体感二時間空の旅を楽しんだ僕には重力的に無意味。

死ぬしかない、諦めのいい僕にはわかってしまうのだ。

だから、最後に叫ばせてくれよ


「っ…助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


喉が千切れそうになるほどの轟音、誰に届くわけでもない最後の叫び。

ただ、その声は届かずとも、生きることを願う感情は届くようで、甲板に強く打ち付けられた後、目を瞑るまでに見た光景は生涯忘れないのかもしれない。


「…君が生きることを願い続ける限り、僕は君を生かすよ。今はただ眠り給え、青年。」


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