第六章|事例06:説明可能だが、扱われていない点
事例番号
06-F/2024年8月
発生場所
記載なし
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本件は、これまでに扱ってきた事例と性質を異にする。
理由は単純で、
相談者が私自身であるためだ。
もっとも、
立場が変わったからといって
手順を変える必要はない。
記録し、整理し、説明する。
それだけだ。
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事象概要
2024年8月某日、
私は自宅で作業をしていた。
時刻は深夜に近かったが、
特別な体調不良はなかった。
睡眠不足は慢性的なものなので、
異常として扱う必要はない。
作業内容は、
本報告書の整理だった。
すでに扱った事例を読み返し、
表現を整え、
冗長な部分を削る。
集中を要するが、
慣れた作業だ。
隣室から音がした。
低く、短い音で、
人の声にも、
家具の軋みにも聞こえる程度のものだった。
私は時計を確認した。
時間は進んでいた。
止まってはいない。
その確認だけで、
十分なはずだった。
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継続作業
作業画面に戻り、
数行入力した。
文章は途切れず、
思考も途切れていなかった。
もう一度、
時計を見た。
同じ時刻ではなかった。
当然だ。
この時点で、
異常は存在しない。
確認は、
確認に過ぎない。
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確認事項
・同居人:なし
・窓:施錠
・外部騒音:特記なし
・建物構造:鉄筋コンクリート
音は一度きりで、
繰り返されなかった。
私は席を立ち、
室内を一通り確認したが、
異常は見当たらなかった。
作業に戻った。
戻る理由は十分にあった。
戻らない理由はなかった。
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端末ログの確認
念のため、
使用していた端末のログを確認した。
作業履歴、
保存履歴、
通信履歴。
いずれも正常だった。
少なくとも、
表面的には。
保存ログは、
次のように記録されていた。
23:48 入力開始
23:52 保存
23:57 保存
00:02 保存
私はこの行を、
一度読んだ。
二度読んだ。
三度読んだ。
間隔は、
5分、5分、5分。
規則的だ。
異常ではない。
私は、
その間、
席を立っていない。
保存操作は、
明示的に行わなければ記録されない仕様である。
もっとも、
自動保存機能が作動した可能性はある。
設定を確認すれば、
技術的な説明は可能だ。
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微細な違和感
ただし、
保存時刻の間隔と、
私の体感時間が合わない。
5分は、
5分だ。
長くも短くもない。
だが、
23時52分から57分までの5分と、
57分から0時2分までの5分が、
同じ長さだったとは思えなかった。
思えなかった、
という表現が正確だ。
思えないこと自体に、
意味はない。
私は、
この感覚を
記録しなかった。
記録に値しないからだ。
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反復
私はログを印刷した。
紙にすると、
視認性が上がる。
保存時刻を
一枚ずつ切り離し、
机の上に並べた。
時系列順。
逆順。
保存間隔ごと。
並べ替えても、
結果は変わらない。
数字は動かない。
動くのは、
私の視点だけだ。
同じファイルを、
何度も開いた。
閉じて、
また開く。
開くたびに、
内容は同じだった。
同じであることを、
確認している。
確認は、
作業だ。
作業は、
判断に影響しない。
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説明可能性
私は、
考え得る要因を列挙した。
・自動保存設定
・バックグラウンド処理
・体感時間の歪み
・集中状態による時間感覚の変化
いずれも、
既知の現象だ。
説明は可能だ。
反証もない。
説明可能である以上、
怪異を仮定する理由は存在しない。
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扱われていない点
ただし、
説明可能であることと、
すべてが説明されたことは、
同義ではない。
この点について、
私は自覚している。
自覚しているが、
扱わない。
扱わない理由は、
単純だ。
扱う必要がない。
判断に必要な情報は、
すでに揃っている。
これ以上の検討は、
判断を揺らがせるだけだ。
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所見
本件は、
生活環境と機器仕様、
および人間の時間感覚の特性を考慮すれば
説明可能な範囲に収まっている。
私自身が当事者であることは、
判断に影響しない。
影響しないはずだ。
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結論
本件に、
怪異性は認められない。
私は、
これまでと同じ手順を踏んでいる。
記録を確認し、
不足があれば補い、
結論を出す。
判断に揺らぎはない。
揺らぎはない。
同じ行を、
何度も読み返す。
同じ文を、
何度も打ち直す。
だが、
内容に変更はない。
変更がない以上、
問題も存在しない。
問題は、
存在しない。
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