路上占い、あれこれ139【占い師は創作も好き】

崔 梨遙(再)

ビールのつまみに 1553文字。いかがですか?

 僕は徹平、風俗店の店長。今日は、新人の明菜さんの風俗デビューの日。そこへ常連のお客様、高杉さんが来たので頼んでみた。


『高杉さん、今日、風俗デビューの新人の娘(こ)がいるんですよ。指名してあげてもらえませんか? いろいろ教えていただきたいんですよ』

『あ、いいですよ。僕は接待で来てるだけだし。相手は誰でもいいんです』

『ありがとうございます』



 高杉が呼ばれて事務所を1歩出ると、茶髪で髪の長いメイクの濃い女性が立っていた。明菜だ。明菜は帽子を深く被ってぎこちない。初めての風俗体験、緊張しているのだろうか? と高杉は思ったが気にしなかった。高杉達はホテルに入った。


『・・・お風呂のお湯、溜めますね・・・』


 明菜の消え入りそうな声。高杉は明菜にとって意外なことを言った。


『なんもせんでええで。僕も何もせえへんから』

『時間まで、何をするんですか?』

『寝ててもええし、携帯でもいじってたら? 僕は寝るから時間になったら起こしてね。ほんまに何もせんでええからね』

『じゃあ、お客さんはなんで店に来たんですか?』

『接待やから、仕方ない』

『しないんですか?』

『うん、しない』

『なんでしないんですか?』

『僕は嫁を抱いてるから、そっちの方は不自由してへんねん。嫁で満足してるから、他の女性を抱く必要が無い』

『もし奥さんが秘密を持っていたら、どうしますか?』

『どんな秘密?』

『風俗店で働いてるとか』

『それはショック過ぎるなぁ、でも、まず理由を聞くわ。人間の行動には理由があるはずやから』

『もし、奥さんが借金を抱えていたらどうしますか?』

『金額を聞いて返済計画を立てる』

『・・・・・・』

『あれ? 明菜ちゃんどうしたの? え? もしかして泣いてる?』

『ごめんなさい、あなた!』


 明菜は帽子とウイッグをとった。


『お前、麻衣子か?』

『うん、友達の保証人になったら借金を被ることになったの。あなたに言えなくて、風俗で働いて自分で返そうとい思ったんやけど』

『一緒に返済計画を立てよう』



『・・・・・・ということで、私、お店をやめます。すみません』

『うん、仕方ないね。良かったやんか。ほな、お幸せに』


 僕は明菜は人気風俗嬢になれると確信していた。辞められたのは残念だったが仕方ない。高杉夫妻の幸せを本気で祈ることにしよう。



 僕はよくナンパをする。お店には美人やカワイイ子が沢山いるのに、店長だから手は出せない。妻はもう2,3年抱いていない。


 いつものバー。長い金髪の派手な女性。僕は1瞬で女性のポイントを見る癖がついている。顔、美人。化粧は濃い。スタイル良し、暇そう、声をかけたらついてくる可能性は高い。


『あちらのお客様からです』


 僕は彼女に1杯。彼女は僕を見て会釈。僕は彼女の隣に座る。寂しがり屋が2人出会えば、行く所なんてただ1つ。


 僕は彼女の体から離れた。1回でかなりの満足感があった。良い女だ。1回だけのことも多いが、こいつとは定期的に会うようにしよう。


『ねえ、あなた奥さんいるの?』

『ああ、いるで』

『奥さんのことはいいの?』

『生活費は渡してる。もう長いこと抱いてへんわ』

『で、こんな風に遊んでるの?』

『ああ、いろんな女を抱けて、これはこれで楽しいんや』

『もし、奥さんに浮気がバレたらどうするの?』

『僕は離婚しても構わない。それより、もっと君を抱きたい』


『シャワー、浴びてくる』


 彼女はシャワールームへ。僕はもう1回楽しめるか? 自分の体力を確認。うん、今夜はもう1回くらいできそうだ。


『お待たせ』

『お、お、お、お前は?』

『メイクを濃くしてウイッグつけただけなのに、私がわからないなんて、あなたって本当に普段私を見ていないのね』


 彼女は、妻の絵里香だった。


『さあ、浮気がバレたわよ。どうする? 本気で離婚する? 慰謝料はタップリもらうからね!』



 ああ、高杉夫妻が羨ましい・・・。




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路上占い、あれこれ139【占い師は創作も好き】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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