子供の頃の親友の話
森鷺 皐月
第1章 小学生編
第1話 いつもの放課後
キーンコーンカーンコーン
放課後、小さな足音がたくさん響く。
僕はランドセルを背負い、みんなに負けず廊下を走って昇降口に向かう。
いつものメンバーで集まる。
僕らの暗黙の了解だった。
肩をポンと叩かれる。
「今日は、公園」
それだけを言って前を走るのは、一番足の速いハヤトだ。
にやりと笑い、昇降口で靴を履き替えて真っ直ぐ公園に向かって走る。
公園までは、五分もかからない。
途中で転びそうになったユウが、「待って!」と叫んで、それでも誰も止まらない。
それが普通だった。
ブランコは二つ。
鉄棒は錆びている。
滑り台は夏になると熱くなる。
僕らはいつも、
順番も決めずに遊んだ。
気づいたら誰かが鬼で。
気づいたら誰かが泣いていて。
気づいたら、また笑っていた。
夕方になると、どこかの家のカレーの匂いがして、「そろそろ帰ろう」と誰かの声。
それも決まっていないのに、いつも同じ流れで準備する。
「また、明日」
これも誰が言うとは、決まってない。
それでも、必ず誰かが言う。
それぞれの別れ道で手を振る。
夏の匂いとひぐらしの鳴き声。
いつも通りだ。
何も、おかしくない。
「…………」
そのはずなのに、なぜか胸の奥が少しだけざわついた。
理由は、分からない。
ただ、何かを数え忘れている。
そんな気がした。
でも、立ち止まる理由もなくて、僕はそのまま帰路についた。
「ただいま」
明日も僕らは、ちゃんと五人のはずだから。
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