普通だと思ってた私の娘が…

⭐︎Ryua⭐︎

第1話

咲希は、穏やかな日常を送る普通の母親だった。夫の健太郎とは10年以上連れ添い、二人の間に生まれた一人娘の彩(あや)は、今年で中学二年生になる。咲希にとって、娘の彩は何もかも順調に成長しているように見えた。学校の成績も良好で、友達との関係も悪くなく、家でも素直で明るい性格をしている。家族の会話もいつも和やかで、特に大きな問題もなく、咲希は自分の育てた娘に満足していた。

だが、ある日の夜、咲希は思いもよらない光景を目にすることになった。それは、偶然見かけた携帯電話の画面から始まった。

その日は、夕食を準備している間、彩がリビングでスマホをいじっているのが見えた。咲希は特に気にすることなく、台所で作業をしていた。だが、ふと目を向けたその時、彩が電話をかけている様子が目に入った。咲希は「誰に電話してるのかな?」と気になり、耳をすませてみると、次の瞬間、娘の言葉に凍りついた。

「うるさいんだよ、もう。お前みたいなのとは遊びたくないって言ってんだろ!」

咲希は、思わずその言葉に耳を疑った。彩が話している相手の名前はわからなかったが、その声色と口調には強い冷たさと怒りが滲んでいた。

「お願いだから、もう電話切って…」

咲希は恐る恐る声をかけた。彩は急に電話を切り、スマホをポケットにしまったが、咲希の目にはどこか不自然に感じられる娘の表情が映った。

「どうしたの、彩?」

咲希は息を呑みながら、娘に向かって尋ねた。娘は少し黙っていたが、やがて顔を上げ、笑顔を作って答えた。

「ううん、なんでもないよ。ちょっと友達と話してただけ。」

咲希はその言葉を信じたかった。しかし、どこかで引っかかるものがあった。普段の彩の態度とはまるで違う、冷徹な一面が垣間見えた気がしてならなかった。

その夜、咲希は彩が寝た後も、そのことを考え続けた。もし、彩が本当に何か問題を抱えていたら――。彼女はそんなことを考える自分が信じられなかった。だが、心のどこかで、娘に隠されたもう一つの顔があるのではないかという不安が膨らんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る