ささやかなる楽園

Wall Gatsby

ささやかなる楽園

もっと早く、きちんとした楽園を心の内に得る方法はないのだろうか。

かねてから多くのことを望み、少なからざる努力をして(身体を鍛え、本を読み、物事の判断を保留し、音楽を聴き、よく寝ている)きたが、一向に何も得ない。

一発でいいから、ドカンと衝撃を受けて、楽になりたい。

女が必要なのだろうか。

まあ、それも間違いのないところだ。


ケース1:犯罪

飛行機内で、キャビンアテンダントの尻に手を当てた。相手の身体が一瞬で硬直し、空気が凍り付いた。少なくとも私にはその様に感じられた。

揉んでみた。勃起した性器からは、透明な精液がにじみ出て、私の下着を湿らせる。

女の股の間を想像する。濡れているだろうか。そうであってほしい。

「やめて下さい!」

女の胸を思い切り、しかし探るように揉んで(首元から手を差し入れて生の乳首に触れる)、抵抗する身体を押さえつけ、唇を塞ぐ。

飛行機は、飛んでいる。


ケース2:暗黙の了解

彼女の生理が始まった。トイレに行って、汚物入れを捨てに行く。中には生理用品が入っている。

なぜ私が、この汚物処理(トイレのゴミ箱の黒い袋をスーパーの白い袋に入れてさらに家庭ゴミの袋―透明な袋に「熊谷市」と青い字で書いてある:に、マトリョーシカ方式に封をしていくだけなのだが)をしなくてはいけないのか。疑問、というか、あまりに直截的に存在する概念に対する疑念なのだが。(例えば、彼女が捨てるにしても、私がするにしてもどうでもいいのだが、なぜかふとした折に私が捨ててしまう。彼女の主に使う汚物入れなのだが、私が捨てた方が、男が後始末をしているようで、潔くてまっとうな行いのようだが、考えようとしなくても、中にある赤い血のにじんだ汚物のことが、頭の中をよぎってしまう。それにだいたい、彼女はこんな気の利かない男性の私にこれを始末することに対して、嫌気を感じているのではないか? でもなぜか私がいつもする、日課になっている、暗黙の了解)。

私の頭が変で、いつもこんなことを想像してしまうのだろうか。それとも、黒い汚物入れの袋の中身を意識するのは、人間にとって当然の想像力(?)の帰結なのだろうか。だって、そこに中身がなければ、捨てないわけだし、中身を知っていることは、当然ながら捨てる人の行動規範の原因であるわけだし、うーん、訳が分らなくなってきた。


ケース3:トンネル

この、薄ぐらくて狭い(本当に狭い、身をかがめないと、大人の私には通れない)トンネルをくぐり抜けないと、辿り着けないキャバクラがある。

別に猥雑なトンネルではない。壁がピンク色をしているわけでも無いし、黄色い地面なのでも無い。ピカピカ光る、ライトが付いてるわけでも無い。しつこいか。

とにかく、普通のトンネルだ。

どんなトンネルか?―上手く説明できない。ただくぐり抜けるのは、エロい。


終わり


P.S―出してはいけない尻尾を、年上の美しい女性にたちに捕まれたとき、しかもそれが奪い合いだったとき、一本しか無いそれを、あなたはどう使いますか?

「君、大丈夫?」と、黄色い友達に、声をかけられた。



出典―1996,ガーガディア・コールマン,「秘密の言葉」


訳:大竹ガールディン


{ガーガディア・コールマンは、アメリカ西部のマルトン大学で中西部の歴史学の権威として教授を務めた後、自死に追いやった愛人に対する罪を問われ、連邦警察に追われた。その際、懇意にしていた北アメリカのオールディン警部に、電報として打たれたのが、上記の文章である。}

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